小説を2冊読んだところで、監督作品も見てみようと思いました。文筆家が映画監督をやる、というのはどういうところが難しいのか。
感想をいうと、ところどころ、ブツッ、ブツッ、と場面が変わって「え、その間どうしたの」と思うことがあったけど、全体的にロマンチックな大人のおとぎ話という感じでした。大人のというか中年男性が美少女(というほど若くないか)と短い恋に落ちるというファンタジー。
この映画は、ちょっと目を離すと道に迷う。どんどんストーリーが展開する。小説は読者が自分のペースで休んだり繰り返したりしながら読めるので、書く方が時間をコントロールしなければならない度合いが低いけど、映画は映像と同時に視聴者が運ばれていくので、時間コントロールはきわめて重要。ふつうの人がちゃんと見ていれば全部わかる、が前提となる。そこをあえて崩すときは、それなりの意図があるし、覚悟が必要だ。そういう意味で、この作品には、最初から映画監督を志してきた人が身に着けてきた心理戦の強さ、人心をコントロールする”ズルさ”が感じられない。まっ正直な分、視聴者が踏み込んで理解しようとしないと、置いていかれてしまう。
私が読んだ小説2冊は、この映画より暗い雰囲気が強かったけど、この映画にもダークな部分はある。映像のほうが、生き生きとした登場人物のリアルな生活が見られて、なんとなく生命力を感じやすいのかな。
中年男性がファンタジーを書くと、だいたい妖精のような美少女と恋をするんだけど、これが中年女性だったらどうなんだろう。多分主人公を不器用な少女にして、王子様が現れるんじゃないかな。今の自分は恥ずかしくて登場させられなくて、数十年前の自分をイメージしながら、母の視点で書く。とか。最近多い女性のリベンジムービーは、最後に相手も自分も破壊するものが多い。国内、国外にかぎらず、女性の自己肯定感ってグローバルに低めなのかなと感じたりします…全然これとは関係ないですけど。