中国系アメリカ人メイ・パンの生家が「OKランドリー」って、”エブエブ”を思い出しますね。で、失われた週末って、一般大衆がジョンの動静を知ることを失われたってことだな。アガサ・クリスティ失踪事件みたいにマスコミから「失踪」した、という。
割と最近、別のドキュメンタリー番組でメイ・パンのインタビューを見たので、この映画も見たような気になってたけど、全然違う作りだ。
ジョンは一生、少年のような心を持ち続けた人で、死ぬまで母を必要としていたことや、ヨーコがずっとジョンの強い母だったことは、ビートルズよりソロのアルバムのほうをたくさん持っている私のような者には既知だ。でもヨーコがどんな”母”だったかは全然わからなかった。この映画で語られていることを見ると、毒親とまではいかないけど、かなり束縛の強い母だったんだなと思う。母だから、気に入った女の子を彼にあてがい、事情が変わると別れさせる。ヨーコは悪魔的な女だったというより、ジョンを自分のものとして守り抜こうとした、よくいる子離れできない母だ。妻じゃなくて母。だからジョンは絶対に彼女を捨てられなかった。と思う。
メイといるときの無邪気なジョンは、母親コンプレックスがなかったら?という少年ジョンの表情だ。この中で心身ともに健康そうなのはメイだけで、ジョンは普通の幸せを手に入れるのが難しい状態が長く続いてしまう人で、ヨーコは愛情と思い込みの強い人物。ひとり無邪気な子どもだったメイは、この夫婦にabuseされたようにも見える。だって、結局のところ、ジョンはぜったいにヨーコから完全に離れることはできなかったと思うから。
「ロックン・ロール」は歴史に残る”青春のロックンロール大名盤”だし、この頃に作られたソロアルバムはどれも聴きこんだ。ジュリアン・レノンが1980年代に来日公演をやったときは聞きに行った。だからメイと一緒だった時代のジョンのきらめきを私はこよなく愛してる。メイは一緒にいる人たちをハッピーにする人だ。でもジョンの深い孤独を包み込めるものは老若男女、動物の種類を問わず、ヨーコしかいなかったじゃないか、とも思う。それが彼の幸せなのか、何が幸せなのか、わからないけど。