映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

2011-01-01から1年間の記事一覧

今村昌平監督「豚と軍艦」26

1961年、今村監督35歳のときの作品。ジャケットが秀逸で、ジャケ借りしました。 長門裕之演じるチンピラやくざの欣太は、ひと稼ぎして恋人の春子と所帯を持とうと考えています。でもヤクザの世界は裏切りに次ぐ裏切り。…春子は一人、街を出ていく。ってなス…

伊藤俊也監督「女囚701号 さそり」25

和製KILL BILL。…うそです、あっちがアメリカン・サソリ。 (ご存じない方へ:この映画はクエンティン・タランティーノのFavoriteで、キル・ビルでもこの曲のテーマ曲「恨み節」が流れてるくらい。自分を裏切った男への復讐が中心になっているところも、眼光…

黒澤明監督「素晴らしき日曜日」24

それでもDVDは届き続ける。(from TSUTAYA)ので、見る。この作品を借りてみた理由は、1947年と古いこと、意外にも黒澤作品だということ、ジャケットが明るくて素敵だと思ったこと。でもかなりウェットな映画で、暗いシーン六割強でした。主役の若い二人はと…

溝口健二監督「雨月物語」23

1953年作品。 でも時代物なので、ちっとも古臭くありません。 知的だけど野性的な森雅之、やっぱりステキです。 良妻賢母の田中絹代はとっても可愛い。 そして幽霊になった姫を演じる京マチ子は……美しいというか……いやこれどう見てもお雛様でしょう!でなけ…

新藤兼人監督「午後の遺言状」22

1995年作品。 「新藤兼人・私の十本」が、これで完結しました。 時系列でいうと「一枚のハガキ」が最後なんだけど、この作品を最後にして本当によかった。面白かった!完結した!という達成感と充実感があります。 老人をテーマにした映画や本はいくつか見た…

新藤兼人監督「落葉樹」21

1986年公開作品。新藤兼人版「銀の匙」。(←決めつけすぎ) 「銀の匙」、感想にリンク貼ろうと思ったら書いてなかった…。著者は中勘助、子ども時代に乳母と過ごした満ち足りた時間を丁寧に丁寧に描写し、「読書好きな人のベストテン」内に必ず入る、玄人受け…

新藤兼人監督「ある映画監督の生涯 溝口健二の記録」20

1923年から晩年の1956年まで、90本を超える映画を監督し続けた日本の巨匠 溝口健二の生涯を、新藤兼人本人による多数のインタビュー映像でまとめたドキュメンタリー映画。1975年公開。ところで映画監督は「ジャーナリスト」なんでしょうか?(そもそもジャー…

新藤兼人監督「裸の十九才」19

1970年公開作品。19才で殺人を犯して死刑囚となり、刑務所の中で独学してたくさんの書物を残した永山則夫の実話をモデルにした映画です。まったく罪のない人たちを殺めることに同情の余地はありませんが、この殺人犯の生きてきた道は見ていてとてもつらく、…

新藤兼人監督「鬼婆」18

飲み会がなくなってポッカリ時間が空いたので、今日も映画。1964年公開作品。 芥川龍之介「羅生門」の世界です。落武者を殺して武器や鎧を売って生計を立てている、中年女と息子の嫁。息子は戦で死んでしまい、別の男が嫁に手を出そうとします。生と性への激…

新藤兼人監督「一枚のハガキ」17

ここまできたら、とことん付き合いましょう! ということで、ちょうど上映が始まった新藤兼人監督の最新作を見に行ってきました。 日曜の午後のテアトル新宿はかなりの入りで、危うく立ち見になってしまうところでした。観客の多くがおそらくシルバー料金…映…

新藤兼人監督「人間」16

1962年公開作品。4人が乗った船が台風で流されます。備蓄食料が尽きてくると争いが起こり、やがてさらに恐ろしいことが…。感想:「……。」 どんどん重くなっていきます。ここまでいくと商業的には厳しくなっていくんじゃないか、どこまでいっちゃうんだろう新…

新藤兼人監督「裸の島」15

1960年公開作品。「モスクワ国際映画祭」グランプリ受賞。 この映画は、事前の情報なしでいきなり見てよかったです。 「原爆の子」の次の「裸の島」だから、きっとにぎやかに市井の人々を描いた力強い作品だろうと思って見たら、一向にストーリーが動かない…

新藤兼人監督「墨東綺譚」14

今回のNGワード:「体当たりの演技」軽く見られる作品はないかな、と思って借りてみました。1992年、今から20年も前の作品だけど、この監督の作品の中では新しいほうです。永井荷風が自分の小説の主人公となって、小説世界の中の遊郭を回ります。自分の娘ほ…

新藤兼人監督「原爆の子」13

戦争の記憶がまだ新しい1952年に作られた映画。まだ壊れた家の跡が石ころだらけのまま残っていたり、生き残った人たちが突然発病して亡くなったりする時代です。乙羽信子が、終戦後6年たって初めて広島に戻る幼稚園の先生の役。当時3人だけ生き残った園児た…

新藤兼人監督「愛妻物語」12

新妻物語かと思ったら違った。失礼しました。「新藤兼人 私の十本」をご寄贈いただき、”読んでから観るか!?観てから読むか!?”(どっかで昔聞いたような)と迷ったのですが、1章だけ読んでみたところ、これは絶対映画が先だ!と思い、さっそく入手しまし…

松岡錠司監督「きらきらひかる」11

1992年の作品。薬師丸ひろ子が演じる、アルコール依存症ぎみの女性、笑子。彼女は家でイタリア語の翻訳をしています。豊川悦司演じる、同性愛者の医師、睦月。筒井道隆演じる大学生、紺。笑子と睦月が事情をわかった上でお見合い結婚をするんだけど、睦月と…

成瀬巳喜男監督「浮雲」10

1955年の作品。林芙美子の小説がベースで、高峰秀子と森雅之が主役。 珍しくこれは原作を先に読んでます。高峰秀子可愛いすぎる!!要は植民地に赴任していたときの不倫相手に内地に戻ってきたら捨てられて、追いかけて逃げられてまた恋をして…っていうお話…

今村昌平監督「赤い橋の下のぬるい水」9

2001年作品。清水美砂と役所光司が主演で、カンヌ映画祭正式出品作品として話題になったあの映画です。当時すでに私は大きな大人でしたが、”見ちゃいけないいやらしい映画”だと思ってました。実際に見てみたら、全然いやらしくなかった。性を笑える大人のた…

市川昆監督「ぼんち」8

市川雷蔵主演の1960年作品。 幻のスター!というイメージが強い人ですが、この映画では育ちのいい、派手さをあまり感じさせない足袋屋のボンボンを演じています。たった100分チョイに一生を詰め込んであって、これだけ駆け足で語るとどうしても寓話っぽくな…

今村昌平監督「復讐するは我にあり」7

1963年に実際に起こった連続殺人事件を元にして書かれた佐木隆三の小説を、1979年に今村昌平が映画化したもの。主人公の榎津は長崎の五島で敬虔なクリスチャンの家に生まれてやがて別府に家族で移転しますが、キリシタン差別を黙って受け入れる父に反発した…

東陽一監督「もう頬づえはつかない」6

1979年作品。当時の大学生の雰囲気や気分がとてもよく描けている映画だと思います。女子大生「まり子」は桃井かおり。彼女が追いかけている、自分にしか興味がない”ポスト全共闘時代”の年上のライターが森本レオ。桃井かおりが酔ってうっかり付き合い始める…

中江裕司監督「ナビィの恋」5

1999年作品。”名画”(立派な映画、くらいの意味、たぶん)ではないのかも。けどいい映画だ。…と思いました。いつかまた見てみたい。東京で仕事をしていた娘が沖縄の小さな島に戻ってくる。同じ船に実は、彼女のおばあちゃんの若いころの恋人が乗っていた。お…

本多猪四郎監督「マタンゴ」4

1963年の作品。 裕福で享楽的な若い男女7人の乗ったヨットが難破し、食糧のほとんどない無人島に漂着する。 (この辺で「電波少年」を思い出してしまう) 内訳は、男性5人、女性2人。女性2人に男性たちの目が集まる。 (この辺で「東京島」を思い出…

浦山桐郎監督「キューポラのある街」3

浜田光夫と吉永小百合でとっても有名な、1962年の作品。キューポラ=煙突がにょきにょき生えてる、鋳物工場の多い埼玉の川口が舞台です。このところブログで「昔の映画は女優さんが可愛い」と続けて書いてるので、今回も「吉永小百合が可愛い」と書くつもり…

小津安二郎監督「浮草」2

1959年の小津映画。 旅芸人一座がある街に着く。座長は女のスター芸人と夫婦同然だが、彼が街に残していた昔の女と息子の家に足しげく通うのを見て、女芸人は・・・。(以下ネタばれ)座長の息子はもう一人の若いほうの女芸人と駆け落ちしてしまうし、あまり…

川島雄三監督「幕末太陽傳」1

「映画」の新ジャンルを追加してみることにしました。 TSUTAYAディスカス、つまり郵送でDVDを借りるのを始めたところ、こういう大昔の作品はほかに借りたい人があまりいないのか、あっという間に送られてきました(見たいDVDのリストを登録しておいて、在庫が…