映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

2016-01-01から1年間の記事一覧

ダニエル・エスピノーサ 監督「チャイルド44 森に消えた子供たち」1447本目

謎解きの要素がもっとある作品かと思ってたんだけど、ソビエトをめぐる戦争小説、という印象でした。 せっかくのトム・ハーディ、ノオミ・ラパス、ゲイリー・オールドマン、ヴァンサン・カッセル が、チャーミングではあるけど、いろんな行動を、そうしなけ…

チャン・イーモウ 監督「あの子を探して」1446本目

中国のいなかの子どもたちが可愛い! わずか13歳の「代用教員」は、ほとんど生徒と同じ背格好。 勉強を教えるどころか、歌も最後まで歌えないし、先生としての資質や自覚もまだなんにもない。普通の子どもだ。(痛々しい気がするのと同時に、こういうとこ…

チャーリー・カウフマン 監督「アノマリサ」1445本目

いつも変な映画を撮るカウフマン監督の、新しい変な映画。 主役の男の見た目は一見普通だけど、「深刻な味覚障害」くらいは病んでる。ただ、彼がわからなくなってるのは味じゃなくて人の、声と見た目の違い。顧客志向なんたらの本が売れて講演会で旅をしてる…

ローランド・エメリッヒ 監督「インデペンデンス・デイ リサージェンス」1444本目

前作を見ないまま、この映画を見てしまった。 バック・トゥ・ザ・フューチャーを2から見るくらいバカな事をしてしまった。 でも、前作でヒーローだったらしいウィル・スミスが額に入って飾られてることや、ずっと眠っていた学者が起きたことは、だいたいわ…

フランソワ・トリュフォー監督「映画に愛をこめて アメリカの夜」1443本目

これとか「ニュー・シネマ・パラダイス」とか、ロマンチックなんだけど、ちょっと狭い、内輪受けっぽいところあるよね。トリュフォー監督のやさしさあふれる感じは好きだけど、この映画は、何も知らずに見たら流してしまいそう。コミカルだけどあんまり新鮮…

イサベル・コイシェ 監督「しあわせへのまわり道」1442本目

これもTSUTAYAの配信無料で見ました。太っ腹〜。 大都会の中の、移民一世がフィーチャーされていることで、頭のどこかで、「マダムインニューヨーク」とか「ディーパンの闘い」とかを意識しながら見ているんだけど、パトリシア・クラークソン の表情を見てい…

ルイ・マル監督「恋人たち」1441本目

1958年の作品。ルイ・マルの「死刑台のエレベーター」に続く第二作です。 ジャンヌ・モローがまだ美少女って感じ。「死刑台・・・」ではしたたかなマダムだったのに! 恋人たち、というより、夫婦と恋人と知らない男なんだけど、このワガママな美少女ふうマ…

シュエ・シャオルー 監督「海洋天堂」1440本目

2010年の中国作品。 「天堂」って天国のことなんだ。 北野武的、泣ける抒情の世界、と感じました。 自閉症の大福くんの表情や演技は、なぜか?「道」のジェルソミーナみたい。 彼を残して逝かなければならない、真面目で愛情深い父親と、周囲の優しい人たち…

ルパート・グールド 監督「トゥルー・ストーリー」1439本目

これ日本では未公開なんだ。 さいきんツタヤが、無料配信ポイントを送ってくるので、選んだうちの一つがこれ。 なかなか見ごたえがあった。 マイケル・フィンケルという、つい話を盛ってしまったジャーナリストを、家族を殺したクリスティアン・ロンゴという…

ハワード・ホークス 監督「ヨーク軍曹」1438本目

1941年、戦争に向かって勢いづくアメリカで作られた作品。 不良少年からキリスト教に帰依して働き者になっていたアルヴィンは、宗教上の理由で兵役を拒否したのに徴兵される。彼は町一番の射撃の名手で、上官に諭されて任務を開始した後はたちまち、めざまし…

三浦大輔 監督「愛の渦」1437本目

これも面白かった。(「恋の渦」を見たばかりなので、それも含めて) ただ、大根監督のすごいテンポの良さが「恋の渦」では生かされていて、とってもとっつきの良い作品に出来上がっていたのと比べると、こっちはゆったりと情感に合わせた進行になっている分…

岡本喜八 監督「江分利満氏の優雅な生活」1436本目

1966年の作品。 地味な白黒の画面だけど、アニメーションが混じったりクロマキーといった新技術がさらっと使われていたりして、なかなかオシャレで小粋。主人公は小林桂樹ですからとことん平凡な一般人で、その人が書くから日常が面白い。岡本喜八監督って、…

ブライアン・デ・パルマ監督「ミッション・トゥ・マーズ」1435本目

2000年の作品。 「2001年宇宙の旅」のようなものを作ろうとしたのかな。いや、もっと人間くさいやつ。だってティム・ロビンスが宇宙飛行士だよ?何か深遠な、宇宙の真理に触れているような気もするけど、エピソードが練りきれていない、微妙な印象も少しあり…

グレッグ・モットーラ 監督「宇宙人ポール」1434本目

サイモン・ペッグ+ニック・フロストの映画はいいなぁ。明るくておバカでかわいくて、気分が上がる。 この映画は前に見た友達がほめてたんだけど、なるほどだ。 アメリカ映画なんだけど、イギリス的な要素が散りばめてあるのも楽しい。 オタク文化が苦手な人…

大根仁 監督「恋の渦」1433本目

面白かった!センター街の居酒屋で夜明かししてるようなその辺の子たちを、適当に撮ったドキュメンタリー、かのような映画。 一見フリーダムな彼ら彼女たちの、みょうに細かい気配りや空気読めない感じ、愛憎と性欲のすれ違い、秘密、裏と裏の裏、といったど…

実相寺昭雄 監督「無常」1432本目

1970年の作品。 東京都写真美術館リニューアルのこけら落としで、杉本博司の「ロスト・ヒューマン展」というのをやっていて、その中に、廃墟になった映画館でさまざまな映画を映写して、その間スチルカメラを開けっぱなしで撮影した「劇場」シリーズの連作が…

アダム・マッケイ 監督「マネー・ショート 華麗なる大逆転」1431本目

うう、難しい。でも、時折カメラ目線で“xxでもわかる”的な解説をしてくれる登場人物(または、無関係なセレブw)のお陰で、なんとかかんとかついていきました。こういう映画は、録画やDVDで家でゆっくり見るのがベスト。用語がわからないときにポーズをかけ…

ブランドン・ローパー 監督「A Film About Coffee」1430本目

コーヒーが飲みたくなる映画。 シングルオリジンのスペシャルティコーヒーは、昔から日本の「純喫茶」で追求されていたものだけど、日本のメンタリティだと産地各地に赴いて現地の作業者たちとコーヒーを酌み交わして談義したり、一緒に極めていこうというコ…

山田洋次監督「母と暮せば」1429本目

吉永小百合がまたお母さん役だよ〜、いつまで日本のお母さんとして彼女が映画にでなければならないのかしら。。杉良太郎とか高橋秀樹がいつまでもいつまでも剣豪をやるのと同じで、後を継ぐ女優さんが手薄なんだろうか。<以下ネタバレ> ストーリーは大体見…

山下敦弘 監督「松ヶ根乱射事件」1428本目

面白かった。「ファーゴ」のパロディかな。 わざと、本気じゃないよこんな映画なんて、って言いたくて言いたくてたまらない感じ。 この監督の、俳優のかっこわるいところをとことん追求するかんじ、この映画での三浦友和は、若いころイケメンだったのに今は…

ジョン・バダム監督「ニック・オブ・タイム」1427本目

1995年といえば21年前! ジョニー・デップ若い。 でも、たまたま選ばれた会計士にしては立ち回りができすぎ。 ”ただものじゃなかった”根拠、たとえば実はジュージュツの達人で試合から帰ってきたとか、なんかそういうのを仕込んでおいてもよかったかも。見て…

トム・フーパー監督「リリーのすべて」1426本目

エディ・レッドメイン、憑依型の名優だなぁ。最初は、ええー女には見えないーと思ってたのが、だんだん見えなくもなくなってくる不思議。しかしこの映画で重要なのは妻の愛、または強い母性本能(どっちにしても愛)だ。ベン・ウィショーとプーチン顔の幼な…

エルマンノ・オルミ 監督「木靴の樹」1425本目

カンヌでパルムドールを取った、ということを知っているのといないのとで、印象が変わるかな?評価を変えずにいられるだろうか、私は?3時間ひたすら、昔の名画みたいに美しい農村と美しい人たちが画面のなかでふつうに暮らしている。美しくあろうとしていな…

テイ・ガーネット監督「郵便配達は二度ベルを鳴らす」1424本目

いくつもリメイクがあるけど、これは1946年の作品。 こういうひねりの効いた、人間を深く掘り下げる原作の映画は、白黒の昔の映画を輝かせます。 見てて胃の具合が悪くなるような、いや〜な感じ。 ヒッチコックやオーソン・ウェルズだけじゃなくて、この時代…

ホウ・シャオシェン 監督「黒衣の刺客」1423本目

わかりにくいような、逆に説明的なような映画。 ちゃんとセリフを追っていれば、インニャンが刺客だということや、彼女がかつて慕っていた男の事情もわかるんだけど、ちゃんと見ないでわかる映画じゃない。 すごく、すごーく間が長くて、その間美しい風景を…

石井岳龍 監督「蜜のあわれ」1422本目

変な、おもしろい映画だ。 ポニョのアダルト版。 むかし、エロチシズムって究極的にはなんだっけ?と妄想した老文豪がいて、それを現代の映像作家がもっと妄想してみたのが、これ。赤子が金魚ダンスするときの音楽が、明るいのに夜の雰囲気で、ナイトクラブ…

岩井俊二監督「リップヴァンウィンクルの花嫁」1421本目

あいかわらず、すごい詩情だなぁ。 完全に引き込まれてしまって、騙されてさらわれた花嫁のような、騙して儲ける男のような、登場人物に自分が化体して悲しく、切なく、愚かで無垢な気持ちになってしまっています。黒木華ってこんなに可愛かったっけ。 彼女…

大森一樹 監督「わが心の銀河鉄道 宮沢賢治物語」1420本目

1996年の作品。 賢治役が緒形直人、その父が渡哲也、母が星由里子、愛する妹が水野真紀…という、時代をよく映したキャスティング。その後、斉藤由貴も登場。 宮沢賢治という人の”夢ばっかり見てるかんじ”がよく伝わってきて、ダメじゃん!でも憎めない、とじ…

デヴィッド・フィンチャー監督「ゲーム」1419本目

1997年とは、思いのほか昔の映画だなぁ。 「セブン」「ファイトクラブ」しか見てなかったら、本気で死ぬほど恐怖に震えて見てしまったかもしれない。 「ゴーン・ガール」のどんでん返しっぷりを知っているから、いちいち何も信じられずに疑って見てしまった…

バイロン・ハワード 監督「ズートピア」1417本目

すごく褒めてる人が多いと聞いてたけど、わりと説明的な映画だなと思った。 猛獣でなくウサギの女の子が、強い警察になることに憧れる→意地悪や無視→キツネとの出会い、活躍と落とし穴と失望→大どんでん返し、大団円。 ものごとは一面的ではないという、最近…