映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

2017-01-01から1年間の記事一覧

ニコラス・ブナム 監督「真夜中のパリでヒャッハー!」1674本目

2014年のフランス映画。 ひとことで言うとフランス版「ハングオーバー!」+「ホームアローン」かなぁ。楽しい映画でした。相当のバカ騒ぎをしてるけど、なんとなくスケール感はアメリカより小さめ。主人公がマンガを描く人で、タイトル&テーマが「Babysitti…

シドニー・ルメット 監督「狼たちの午後」1673本目

1972年夏に実際に起こった事件を1975年に映画化したもの。 こんな素顔さらしまくりの、名前呼びまくりの、素人まるだしのスカスカな犯罪があるのか?という間抜けさが、緊張で凍っておかしなことになっている。Blu-Rayに監督自身の解説が入ってて、なかなか…

チャールズ・クライトン監督「ワンダとダイヤと優しい奴ら」1672本目

どんな映画だっけ?と思って見始めたら、のっけからジョン・クリーズ、しかも裁判のときの大げさなカツラ姿。続いてマイケル・ペイリンが吃音の青年役。なんだ、モンティ・パイソンものじゃないか(嬉しそうに)。 ワンダ(演じるジェイミー・リー・カーティ…

ハワード・ホークス監督「三つ数えろ」1671本目

原題が「The Big Sleep」だ。本のタイトルは「大いなる眠り」、これなら昔読んだはず。これが原作だとは知らなかったわ。しかし「三つ数えろ」もいいタイトルだな。次に驚いたのは、フィリップ・マーロウが38歳だということ。いくらなんでも老けすぎだろ!の…

アンドレイ・タルコフスキー監督「サクリファイス」1670本目

これがタルコフスキー監督最後の作品。少ない!でもどれも長い! セリフ多い!耳でひとことも聞き取れない言語でこれは、なかなかの集中力を要求します。 このセリフの多さ、理屈っぽさ。理屈っぽいのに”意識高い”かんじがなくて、土着の哲学を語ってるよう…

ライアン・マーフィー監督「食べて、祈って、恋して」1669本目

この原作がアメリカでベストセラーになるのって、女性たちが自分のことのように思うから?憧れるから? 自分と同じような部分のある女性が、とても自分ではできない冒険をするのに憧れるから? 人気作家で恋多き女って・・・真似のしようがないわ・・・。バ…

ローランド・エメリッヒ 監督「GODZILLA/ゴジラ(1998・アメリカ)」1668本目

また渡辺謙か・・・しょうがないか。他にもいい役者さんがいるんじゃないかとも思うけど・・・。 え、ジュリエット・ビノシュ?フランス人が英語を話してこの映画に出る意味があまりわからないけど、彼女の実在感はこういう作り物がたくさん出てくるフィクシ…

ジョン・ランディス 監督「ブルース・ブラザース2000 」1667本目

映画としては、前作のコピーみたいで実につまらないんだけど・・・ セットも演技も硬くてこなれてなくて、しっくりこないうちにクライマックスの「クイーン・ムセット」(もちろんエリカ・バドゥ)のバンドバトルに突入。この映画はもう、この場面だけあれば…

ヴィム・ヴェンダース 監督「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」1667本目

胸の奥にしみる。中南米的なやわらかい情緒が。 初めてこの映画を見たのは多分2000年代だろうな。バブルの時期にサンバ・カーニバルだのカリビアン・カーニバルだのといったイベントを野音とかでばんばんやってた頃にこの地域の音楽に出会って、なんでこう琴…

ホナス・キュアロン 監督「ノー・エスケープ 自由への国境」1666本目

本当にあるのでは?あるのかも?とぞっとする映画でした。 実際には逃げ出す間もないのかもしれず、こんなにドラマチックな逃亡劇が繰り広げられることはないのかもしれません。特殊な兵器や怪獣やサイコパスは出てこないし、超常現象も起こりません。世が世…

フリッツ・ラング監督「ドクトル・マブゼ」1665本目

1922年のドイツ映画。 どんなに古くても夢中になって見られるけど、サイレント映画はきつかった・・・。 フリッツラングだけど、怪人も狂人も出てこないドラマだから。 しかも3時間もあるし、VHSで画質がすごいから。なんとか数日かけて最後まで見たけど、…

ソフィア・コッポラ監督「SOMEWHERE」1664本目

ずいぶん長い間、映画を見てなかったと思ったけど、1週間ぶりか。 この映画もずっと見たかった。ちょっとセクシーな独身男の生活を描いた映画かと思ったら、女にはよくモテる。会話を見てるとどうも俳優らしい。それどころじゃない、ハリウッドスターらしい…

アンドレイ・タルコフスキー 監督「アンドレイ・ルブリョフ」1663本目

1969年の作品。 そろそろ私は、タルコフスキー監督は天才ではないかと思い始めてる。(すみません、いまさら) この映画も冒頭からなんだか凄まじく美しくて鋭いんだよね。 ロシア語って一文字もわからないけど。一部のゆるみもない映像。どこを切り取っても…

テオ・アンゲロプロス監督「エレニの旅」1662本目

2004年のギリシャ映画。 ギリシャって、1993年に旅行でアテネと島にちょこっと行ったけど、その時のギリシャとここは全く違う。オデッサってウクライナの南端だったんですね。そこからギリシャはまだまだ遠い。首都以外のギリシャの荒地をひたすら歩く。「旅…

ダニエル・グルー 監督「神のゆらぎ」1661本目

美しい映画だなぁ。おそらく監督の美意識なんだろうな。エティエンヌが訪ねて行く家の外径が美しい。エティエンヌを演じるグザヴィエ・ドランの表情も、彼を愛するマルティンの大きな青い目も。こういう、激しいものが何もなく、何もかもたゆたうような映画…

松本俊夫 監督「ドグラ・マグラ」1660本目

1988年の作品。30年も前だ。 この映画、当時も見た覚えがある。桂枝雀が大好きだったからかなぁ。 改めて数十年ぶりに見てみると、松田洋治の演技は確かに天才的。才気走った少年という役にぴったりですね。セクシーで鋭くて悪い大人の男の役をやるようにな…

ジャン=ピエール・ダルデンヌ 監督「午後8時の訪問者」1659本目

驚くほど地味な映画だった。嫌いじゃないけど、映画館でうっかり寝てしまったらあっという間に終わってしまいそうな映画。ベルギーの映画だし、かつておののきながら読んだベルギーの小説家アメリー・ノートンの「午後4時の男」みたいな圧力のすごい映画かと…

パオロ・ジェノベーゼ 監督「おとなの事情」1658本目

2016年のイタリア映画。 イタリア映画の新しいのなんて見たことないから楽しみに見たけど、言葉が多い映画の割に、会話劇として(例えば音だけで、ラジオドラマとしても)醍醐味が感じられるような鋭いトークって感じでもなかった。 最近よく見てるフレンチ…

アンドレイ・タルコフスキー 監督「ストーカー」1657本目

1979年の作品。 ソビエト的な執念深さに惹かれる。 虚飾のない、鉄骨ばかりのゴツゴツした街とか。人物たちの険しい表情、顔に必ず刻まれている深い皺。 感情を配したカメラとあいまって、ストーリーを見なくても美しい。 ひたすらトロッコ列車で移動するだ…

アルフレッド・ヒッチコック監督「ヒッチコックのファミリー・プロット」1656本目

1976年の作品。<ネタバレあり> 監督最後の作品にやっとたどり着けました。しかし・・・あんまり盛り上がりませんでした。。 いんちき霊能力者ブランチィを演じてるバーバラ・ハリスは、ヒッチコック映画によく出てくるおてんばで可愛い女性でとってもチャ…

パトリス・ルコント監督「仕立て屋の恋」1655本目

92分の「秋のソナタ」のあとに、もっと短い「仕立て屋の恋」を見てみる。 「髪結いの亭主」も日本の大人向けの小説みたいに域でロマンチックなタイトルと内容だったけど、これもそうかな、と期待する。期待しつつも、仕立て屋の恋といえば朝ドラ「カーネーシ…

イングマール・ベルイマン監督「秋のソナタ」1654本目

イングリッド・バーグマン!大変美しいおばさまだと思ったけど、声が渋くて誰だかわからなかった。このとき63歳。 昨日見た白黒映画「恥(1968年)」に出ていたリヴ・ウルマンが、10年後のこの作品でもまるでお嬢ちゃんのような感じなのも驚異的な若さ。この…

イワン・プィリエフ 監督「カラマーゾフの兄弟」1653本目

1968年のソビエト映画。もちろんVHS。2本組で3時間52分!だけど、原作は文庫本で5冊だからなぁ。 これでも相当はしょっていて、いきなり長老の居所でのカラマーゾフ家族会議から始まります。 原作を読んでから、あるいはストーリーを知った上で名場面を…

ゲイリー・ウィニック 監督「ジュリエットからの手紙」1652本目

アマンダ・サイフリッド=ソフィーがのっけから美しすぎる。結婚式に出席した時の彼女の美しさといったら。ここまで美しい人が普通の女の子として扱われるのが信じられないくらい。 ガエル=ヴィクターももちろんチャーミングだけど、若干印象の薄いおちゃら…

マット・ピードモント 監督「俺たちサボテン・アミーゴ」1651本目

ああ、ひどい映画だ(嬉しそうに) ロバート・ロドリゲスの世界だな。 これもガエル君おっかけで見ましたが、「ハッピーエンディング」と真逆の、冷血非道の麻薬王の役です(笑)。あの映画とは発声も違う。幅広いなぁ。「天国の口」で一緒に出てたディエゴ…

ギレルモ・デル・トロ 監督「パンズ・ラビリンス」1650本目

スペインとメキシコの合作映画なんて素敵です。想像がつかないから。 主役の女の子のちょっぴり濃い容貌も、不思議な造形の要請がスペイン語でしゃべってる感じも、ワクワクします。それにしても軍人の描写は戦争映画みたいに最初から残酷だけど。(この辺が…

ニコール・カッセル 監督「私だけのハッピー・エンディング」1649本目

ケイト・ハドソンって「あの頃ペニー・レインと」のイケてるお姉ちゃんですね。11年ですっかり強く輝く大人の女性になりました。どちらの映画でも、周囲の人々へのファンサービスが忙しい、優しいけど本音を見せない女性って感じ。根っこから明るいって感じ…

イングマール・ベルイマン監督「恥」1648本目

1968年の作品。 マックス・フォン・シドーとリヴ・ウルマン、そろそろ私も見慣れてきました。 戦争のため楽団が解散して島にこもった演奏家夫婦が、戦乱に巻き込まれてしまう。戦闘機から降りてきたパラシュートを見に行ったことで敵に通じていると疑われ、…

小津安二郎監督「突貫小僧」1647本目

1929年の作品。昭和でいうと4年です。すごいフィルムが残ってたなぁ! 今から90年前。突貫小僧さん生きてたら90いくつ、当時の彼から見てひいおじいさんより上くらい。 これずっと見たかったのです。TSUTAYAプレミアム、ばんざい。 何がすごいって、一般家庭…

ジャン=マルク・ヴァレ 監督「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」1646本目

原題は「Demolition」。解体という意味だそうです。妻を亡くした夫が壊れていくってことか、彼が周囲のいろんなものを破壊していくってことか。詩のようにロマンチックな邦題も、悪くないです。 「雨の日は会えない、晴れの日は思い出す」というのは、車に妻…