映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

その他の国の映画(90年代以降)

シャルル・ビナメ 監督「エレファント・ソング」1606本目

2014年のカナダ映画。 グザヴィエ・ドランが英語しゃべってる。ネイティブじゃないという感じはないけど、フランス語の方が自然な気がする。。。誰もが愛するものを失うという、悲しみに満ちた映画なんだけど、全員大人なので誰もオイオイ泣いたりしません。…

チャン・ヤン 監督「スパイシー・ラブスープ」1601本目

1998年の中国映画。 冒頭に、白と赤のスープが陰陽印の鍋で煮えているところが映し出されます。スパイシー・ラブスープというのはこの辛いスープのことなのかな。 これは、コメディというよりロマンチックな群像劇ですね。北京ってなんて素敵な街なのかしら…

レニー・アブラハムソン 監督「ルーム」1555本目

すごい題材。 いかにも、戦争と平和と堕落と疑問を経た現代らしい、今までの”勧善懲悪”や”ハッピーエンド”に疑問を投げかける作品だと思います。(同じ意味で、プリンス・チャーミングを全否定した「アナ雪」や、無知で清純な妻を全否定した「ゴーン・ガール…

ラージクマール・ヒラニ 監督「PK」1537本目

「きっと、うまくいく」の監督&主演、インド映画好きの友人大絶賛、ということで期待していましたが、娯楽というより、思い切り国家間、民族間の根幹となる課題をど真ん中に据えた問題作でした。ギャグでくるんでるとはいえ、この映画が大ヒットするインド…

パク・チャヌク 監督「渇き」1527本目

2009年の韓国映画。現代バンバイアもの。というより、バンパイアになることや襲われることを通じて道徳やエロスに挑む作品、といった印象。 韓国映画の特徴として、血管が切れそうなくらい高まる感情表現が挙げられると思うのですが、(それに対して日本は薄…

グザヴィエ・ドラン 監督「たかが世界の終わり」1501本目

くだんの監督の新作。 22のときに家を出て12年。弟が実家に帰ってきた。自分の死期が近いことを家族に伝えるために・・・。タイトルが良すぎる。「永遠と一日」くらい良い。もうタイトルだけでお腹いっぱいだ。原題もまさに、英語で「IT'S ONLY THE END OF T…

パトリシオ・グスマン監督「真珠のボタン」1286本目

「光のノスタルジア」は流して見てしまいましたが、こっちはむごい過去のできごとを見せつけられて、ずっと苦しい気持ちで見ました。2本のドキュメンタリーをこの順番で見られてよかったんだと思います。チリは日本から見てまさに地球の反対側の国。 過去に…

パトリシオ・グスマン監督「光のノスタルジア」1279本目

珍しく、途中寝てしまったので正確な感想が書けません、すみません・・・。チリのアタカマ砂漠で、過去に独裁政権下で埋められた遺体を探し続ける人々。同じ土地に、地上にいくつかしかない天体観測に最適な場所を求めて集まってくる人々。 2つのドキュメン…

ダミアン・ジフロン監督「人生スイッチ」1271本目

これはアルゼンチンの監督の映画だそうです。やっぱり中南米の映画監督って好き。 感情はこんな風にどかーん!と放出したほうがいい。出さないと鬱屈して何も解決しないままになっちゃうんだよね。いつも熱くて、常にやりすぎちゃう人たち、どうしようもなく…

スジョイ・ゴーシュ 監督「女神は二度微笑む」1229本目

インドには、魅力的な役者さんがたくさんいるんだなー。 主役のスジョイ・ゴーシュはもちろん、刑事役も悪役も、それぞれの人間的な優しさや柔らかさ、強さと冷酷さ、それぞれの性格をもってしっかり生きています。 ストーリーは、どんでん返しをしつつも、…

ジョージ・ミラー 監督「マッドマックス 怒りのデス・ロード」1225本目

まずは2015年キネマ旬報外国映画第1位、おめでとうございます。(←タイムリーな話題) なんかこう、ズドーーンときて、ドッカーーーンときて、ブワーーーッとくる映画でした。 几帳面な技術や効果の分析をしたくなくなる、突き抜けたバカバカしさが全編を貫…

グザヴィエ・ドラン監督「わたしはロランス」1183本目

若い頃、たとえば20歳前後で、自分が本当にやりたいことがわかってる人っているよね。グザヴィエ・ドランって人も、そういう人だ。才能や実行力もだけど、そこが何よりうらやましい。抑圧された欲望があるからるからやりたいことが研ぎ澄まされてくるんだ…

バフマン・ゴバディ 監督「サイの季節」1181本目

詩人と運転手の現在の姿が、どっちがどっちかわからなくなっちゃって、がんばって見たけどちょっと混乱した。 しかしストーリーはわかった。 革命・・・がすべての原因で、それだけなのかな。これは才能と愛のあふれるカップルに横恋慕した男の執念の物語だ…

ニール・ブロムカンプ監督「第9地区」1178本目

すごく面白い! 人間と同じ大きさの、難民化したエイリアン。感染してエイリアン化する普通の男。 肌の色の違う人間のギャング。天才科学者のエイリアン少年。そんなSFマンガみたいな世界観を、ドキュメンタリーとして撮る!という設定。これ、いい発想だぜ…

ロブ・シッチ 監督「月のひつじ」1170本目

懐かしいような気持ちになる、ハートウォーミングな映画。 アポロ11号の月面着陸のことは、NASAがウソの映像を流したんじゃないかという都市伝説がまことしやかに語られていますが、この映画ではオーストラリアの受信施設でその音声や映像を受信した人た…

グザヴィエ・ドラン監督「Mommy」1137本目

「マイ・マザー」と「Mommy」って、タイトル似すぎてませんか? どれだけ母との確執にさいなまれてるんだ、グザヴィエドラン。といっても決して、同じような映画ではありません。 「マイ・マザー」のママ役アンヌ・ドルヴァル が、この映画でもママ役なので…

グザヴィエ・ドラン監督「胸騒ぎの恋人」1114本目

インパクトは「マイ・マザー」「トム・アット・ザ・ファーム」には敵わないけど、独特の美意識に満ちた作品でした。愛する彼の母親を、「マイ・マザー」の母が演じてます。この映画ではアンドロイドのような、ドクター・スポッックの乳母のような服装をした…

アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ 監督「アモーレス・ペロス」1094本目

1999年のメキシコの映画。タイトルの意味は「犬のような愛」だそうです。「バードマン」のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督、主演は「モーターサイクルダイアリーズ」のガエル・ガルシア・ベルナルですよ!中南米の情熱がぶわ〜っと吹き出してく…

グザヴィエ・ドラン 監督「トム・アット・ザ・ファーム」1084本目

カナダのフランス語圏ってイメージ湧きにくいなぁ。 英語圏なら、アメリカにかなり近いイメージで、少し寒くて少し人口が少ないと想像できるけど、モントリオールは都会でボストン、ニューヨークとかにも近い。どんなところで生まれ育つとこういう映画を作る…

グザヴィエ・ドラン 監督「マイ・マザー」1083本目

いま話題のグザヴィエ・ドラン監督の初監督作品。初めて彼の映画を見ました。 たった19歳のときに撮ったなんて信じられない! すごい色彩感覚。独特の美しさをもつ小物の数々の使い方。インテリアにしろファッションにしろ、見た目からどういうことが伝わ…

ジャン=マルク・バレ 監督「カフェ・ド・フロール」1013本目

「ダラス・バイヤーズ・クラブ」の監督の、ひとつ前の作品なんですね。 ヴァネッサ・パラディ演じる母がダウン症の息子を溺愛し束縛する物語と、DJの男性とその彼女と元妻が人生の分岐点で戸惑う物語が、パラレルで進行します。ヴァネッサ・パラディはアイド…

アレハンドロ・ホドロフスキー 監督「リアリティのダンス」981本目

うーん、マニアック。 「ホドロフスキーのDUNE」もとんでもなかったけど、本当に困った人だ、ホドロフスキーは。 でもこの映画は、「エル・トポ」よりも好きかな。 監督の父を演じる、実の息子のブロンティスがとても良いです。 監督の果てしない自意識が、…

アスガー・ファルハディ 監督「別離」915本目

イランの映画って初めて見ました。 ベルリン映画祭で金熊賞を受賞ということで、私好みの映画かな〜と思いましたが、ずっとみんな怒鳴りあってる映画ってちょっと苦手…。イランはイスラム教の国のなかでは、比較的女性が表に出やすいときいたことがあります…

ワン・ビン 監督「無言歌」892本目

中国の「右派」がおいやられた「改造農場」を描いた映画。これは事実なんだろうか。 当然ながら、中国でこんな映画は作れず、香港とフランス、ベルギーの合作映画です。「壮絶」とか「生理的に耐えられない」というような感想が多いけど、個人的には「サラの…

アリ・フォルマン 監督「戦場でワルツを」871本目

ネットで評判を見ると、日本国内だけでも事実に沿っていないとかプロパガンダだという批判的な感想がけっこうあるけど、私は秀逸な作品だと思いました。アニメーションの力。実写のドキュメンタリーを見ても、監督の恣意をかならず感じる。アニメーションに…

アルフォンソ・キュアロン監督「天国の口、終わりの楽園。」865本目

映画自体はスペイン語、英語字幕付きのVHSというハードル高い環境で見ました。 「ゼログラビティ」の監督ってメキシコ出身なのね。あれとこれの関連性を見つけるのは、とても難しいけど、ビーチと命が重要な要素だというところは同じだ。あの映画でも、最後…

ニキ・カーロ 監督「クジラの島の少女」784本目

先月行ってきたニュージーランドの、マオリ族を取り上げたファンタジー。 クジラに乗ってニュージーランドに渡ってきたと言われる一族の、伝統に厳格な父とそれに反発して外国へ行ってしまった息子、島に残った孫娘。代々男子だけが伝統を受け継ぐことになっ…

レザ・ミルキャリミ 監督「花嫁と角砂糖」736本目

イランの映画なんて初めて見ます。わくわく。ある家の末娘が、隣の裕福な家の息子の嫁になるために外国に行くことになりました。 家じゅうの女たちはおおはしゃぎ。子ども達も着飾って、婿はいないけれど華やかな婚礼の準備が進みます。 幸せに満ちあふれて…

ブライアン・トレンチャード・スミス 監督「サイレント・ワールド2011」655作目

カナダとオーストラリアの合作映画らしい。 同じタイトルの映画がいくつもある中で、これは3作目。1、2作目の平均点は35とか45という悪さなのに、その次が作られたのも不思議だけど、この3作目はそれでも平均点65なので良い方なのでしょう。 オゾ…

スコット・ヒックス監督「シャイン」560本目

よくある家族の葛藤かもしれない。 親の過剰な愛情や期待 vs 神童の繊細さ で、負けるのは常に小さく弱いほう。 世界中の人がみんな自己実現しようとしたら、ぶつかり合うのは当然だ。 ぶつかり合いながら、運や不運に左右されながら、それでも自分が生まれ…