映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

アイラ・サックス 監督「ポルトガル、夏の終わり」3442本目

<ネタバレあります> 日本では、人の名前の映画タイトルが、風景とか状況を表現したタイトルになることがちょくちょくある。もともと邦画は「丹下左膳」みたいな既知の英雄や「横道世之介」みたいに特異な名前でもなければ、タイトルに人名が使われることが…

ペマ・ツェテン監督「羊飼いと風船」3441本目

原題は「Balloon」だけど、「羊飼いの転生」みたいな邦題だったら、牧歌的なものを期待して気持ちを持て余すこともなかったかな・・・ この映画はチベットの伝統的文化vs中国の一人っ子政策、という観点から見るものなのかもしれないけど、ブータン好きの…

フランソワ・オゾン監督「しあわせの雨傘」3440本目

原題は「飾り壺」の意味のフランス語。”しあわせの雨傘”とはだいぶ違うよな・・・何十年ドヌーヴに「シェルブール」を負わせ続けるのか。(確かに傘会社の話だけど) ドヌーヴが、夫に代わって経営の才覚を表すのはいいんだけど、それまで長年、飾り壺として…

アーサー・ペン 監督「奇跡の人」3439本目

すごい映画だ。最後まで目が離せなかった。 視覚・聴覚の二重障害を持つ人に限らず、接点を作れそうにない問題児に、周囲の者たちがどれくらい真剣に向き合えるか、という問題の最高の答えじゃないだろうか? アーサー・ペン監督は、この5年後の「俺たちに明…

ジョン・フォード監督「怒りの葡萄」3438本目

1939年、大恐慌から回復しつつあるアメリカで、原作小説が発売された年のうちに公開された映画。ドキュメンタリー番組みたいなスピード感。 映画のなかでずっと「レッド・リヴァー・ヴァレー」が流れますが、レッド川って2つあるらしい。カナダ国境付近を流…

稲垣浩 監督「無法松の一生」3437本目

これ、過去(2015年)一度テレビでやったのを見て「感動した」とか書いてた私。稲垣監督の作品を見たのは過去にそれ1本だけ。三船敏郎がメキシコ映画「価値ある男」の主役に抜擢されたきっかけになったのがこの映画と聞いたので、じゅずつなぎ方式で再見して…

ウィリアム・ディターレ 監督「ゾラの生涯」3436本目

ポランスキーの「オフィサー・アンド・スパイ」を見たので、これも見てみます。あっちは2022年の公開されたばかりの新作だけど、これは1937年の作品。ワーナーブラザーズが作ったアメリカ映画です。 1894年のドレフュス事件を知らなかった(に限らず世界の歴…

川島雄三監督「暖簾」3435本目

川島雄三監督の作品は、人間が生きてて、完全な善人も完全な悪人もいない。みんなどこかズルくて、どこか可愛い。ふつうの人たちがワイドショーを見ることも、ネットで悪口を書くこともなかった時代。 戦後かつ”高度成長期”前夜の1958年(原作は1957年)。恋…

リチャード・クワイン 監督「パリで一緒に」3434本目

見始めるとすぐ、冒頭がすごく豪華。パリの高級ホテルのプールサイドで、おっさんたちが美女にかしづかれている。エキストラがものすごく多い。やたらとお金がかかってる。石油王の道楽か?利益が出すぎた会社が税金対策のために作ったのか? この頃のアメリ…

是枝裕和監督「ベイビー・ブローカー」3433本目

<ネタバレあります、注意> 面白かったけど、何だろ、この「普通な感じ」・・・。私より先に見た人たちはどう感じたんだろう? 是枝作品を見たときの、胸が苦しくなるような感じがなくて、さらさら見られた。全体的に俳優たちがとても嬉しそうに演じてたか…

ジェラール・クラウジック 監督「WASABI」3432本目

たまたまテレビで見た。そういえばこんな映画あった。 全体的に、おもしろくも新しくもないのが残念。ちっともリュック・ベッソンっぽくない。彼が自分で「レオン」の焼き直し版を作りたいと思うわけがない。日本の誰かが「お金を出すからこの女の子で『レオ…

ミシェル・ゴンドリー監督「僕らのミライへ逆回転」3431本目

2008年なので、14年も前の作品。ミシェル・ゴンドリー監督って好きでほとんど見てるんだけど、これはVOD配信されてないのでDVDで。2015年以来新作がないのかな。英語のWikipediaによると、その後も短編やミュージックビデオは撮ってるようだけど。独特なポッ…

ブレイク・エドワーズ 監督「ピンク・パンサー2」3430本目

「博士の異常な愛情」のピーター・セラーズが好きなんだけど(ハイパーで饒舌で、まさにマッド・サイエンティスト)、彼の出演作はVODにはあまり出てなくて、久々にDVDをまとめ借りしたのでやっと「2」を見ることができました。DVDをどうしても英語音声に設…

ジョー・キャンプ 監督「ベンジー」3429本目

たぶん、生まれて初めて劇場で見た洋画。(その次がスターウォーズかな。邦画はゴジラやヘドラ、もっと小さいときに何本か見た)ジョー・キャンプ監督って、ベンジーの映画しか撮ってない・・・ 典型的なアメリカの住宅地の、ちょっと育ちのよさそうな家庭の…

大林宣彦監督「可愛い悪魔」3428本目(KINENOTE未掲載)

DVDなのに古書の匂いがする。少しカビっぽいような…。よほど前に借りてから時間が空いてるのかな・・・。 これは普通に映画かと思って借りたけどKINENOTEには記録がない。テレビの「土曜ワイド劇場」で1982年に放送された”テレビ映画”らしい。大林監督作品の…

曽根中生監督「BLOW THE NIGHT 夜をぶっとばせ」3427本目

1983年の映画か。不良女子高生が頭を赤くして、長いスカートで地面をズルズル引きずってた頃の文化を伝える作品となっています。 ストリート・スライダーズはハリー作のパワフルな曲もいいけど、蘭丸の書いたデリケートな曲も好きだった。国分寺のスタジオで…

増村保造 監督「兵隊やくざ」3426本目

これも評価の高い、ずっと見たかった作品。勝新太郎が主役でこのタイトルなので、かなりヘビーな暴力の多い映画を予想してた(典型的な苦手分野)けど、非常に軽妙でとにかく面白い映画でした。暴力の場面も多いけど、残虐さを強調するのではなく、いじめの…

イスマエル・ロドリゲス 監督「価値ある男」3425本目

三船敏郎の海外作品への出演で知られてる作品を借りてみました。これは・・・予想よりはるかに珍妙だ。(そこが最高) 「テキサスあたりで撮った、メキシコが舞台のハリウッド映画」ではなくて、タイトルから何から全編スペイン語のメキシコ映画じゃないか。…

石井輝男 監督「ゲンセンカン主人」3424本目

つげ義春の妻、藤原マキが書いた絵日記みたいなエッセイ本を読んだとき、見たいなと思った映画。1993年。30年近く前の作品です。バブルな時代だから、この映画の”何もない感じ”が嘘くさく感じられたかもしれないけど、今見ると”昭和の頃に作られた映画”のよ…

スパイシー・マック監督「史上最高のパンツ一丁男」3423本目

ジャック・ドゥミ&アニエス・ヴァルダ夫妻の美しい映画にひとしきり感動した後に、このタイトル。日本では公開されてないけどDVDは出てるし、YouTubeで全編オフィシャル映像が見られるそうです。 おバカコメディなんだけど、フィーチャーフィルムというより…

アニエス・ヴァルダ監督「アニエスの浜辺」3422本目

監督がやっと自分のことを語り始めた。完結編「アニエスによるヴァルダ」に至る前の、自分の生い立ちを振り返る作品だ。これもまた彼女の愛するものたちを散りばめた、宝物のアルバムみたいな、優しくてかわいくて美しい作品。 いつものように、映画のあちこ…

アニエス・ヴァルダ監督「アニエス・Vによるジェーン・b」3421本目

ひとりアニエス・ヴァルダ特集。(「ベルサイユのばら」にもスタッフとして参加してる) これは「アニエスによるヴァルダ」などから予想して、ジェーン・バーキンのバッグがいかに取っ散らかっているかを見たエルメスが彼女の名を冠したバッグを作るまでのド…

ジャック・ドゥミ監督「ベルサイユのばら」3420本目

今これ見る人いないだろうな・・・ 「敬愛するアニエス・ヴァルダ&ジャック・ドゥミ監督作品ぜんぶ見る」の続きで、DVDでしか見られないものをまとめてTSUTAYAで借りてきました。 英語のタイトルは「Lady Oscar」。ベルサイユとか薔薇とか言われてもフラン…

ソン・ヘソン 監督「力道山」3419本目

韓国で作られた、朝鮮半島出身の日本のスーパースター力道山のドキュメンタリー映画(ロケは日本でやってるけど)。これを日本に移して考えると、アメリカの大リーグでかつて活躍した日本人(または日系人)選手のドキュメンタリーのようなものかな。韓国の…

ビン・リュー監督「行き止まりの世界に生まれて」3418本目

原題は「Minding the gap」っていうんだ。ロンドン地下鉄のドアが閉まる前に「Mind the gap」って野太いアナウンスが流れるのは、「乗り降りの際足元にお気を付けください」だけど、これは「分断をいつも意識している」っていう意味かな。 キアーとザックと…

マーク・ペリントン 監督「隣人は静かに笑う」3417本目

<ネタバレあります> 面白かった。トラウマ系だけど、たまにはこういうエンディングも見たくなります(映画見すぎたイヤなおばちゃんだな) ティム・ロビンズはいつもうまい。ジェフ・ブリッジスも、いつもいい。この二人は役柄を交代してもこの映画は成り…

ロマン・ポランスキー監督「オフィサー・アンド・スパイ」3416本目

ポランスキー監督の作品も、新作はだいたい映画館で見てる。園子温やウディ・アレンの作品も、反感持ちつつよく見てる。人格と作品は別と割り切ってるというより、いろいろな観点で語弊があると思うけど、アール・ブリュットの作品に惹かれるように、彼らだ…

リドリー・スコット監督「ハウス・オブ・グッチ」3415本目

リドリー・スコット監督って、好きだけど(エイリアン、ブレードランナー、テルマ&ルイーズだもん)「プロメテウス」を作ってしまうくらい”思い入れの強さ”のある、ちょっとクセの強い監督だと思っていました。でも「最後の決闘裁判」がとても完成度の高い…

クリスティーナ・リンドストロム、 クリスティアン・ペトリ監督「世界で一番美しい少年」3414本目

「ベニスに死す」を見直したとき、「自分の中の美醜の価値観が試される映画」って感想を書いた。今まで美しいと思っていた人たちより美しい人がいるんだ、という感覚。 「ミッドサマー」は強烈な映画だったけど、見た後で彼が出てたと聞いて、すぐ、あの老人…

福永壮志 監督「アイヌモシリ」3413本目

テレビで放送したのを録画したら、映画の前に監督のインタビューも入ってました。彼自身が勉強したくて、それにアイヌが演じるアイヌの映画を作ってみたくて、この映画を作ったとのこと。子熊を大事に育てた後でいけにえとして神に捧げる、昔からの「イオマ…