映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

市川昆監督「ぼんち」8

市川雷蔵主演の1960年作品。
幻のスター!というイメージが強い人ですが、この映画では育ちのいい、派手さをあまり感じさせない足袋屋のボンボンを演じています。たった100分チョイに一生を詰め込んであって、これだけ駆け足で語るとどうしても寓話っぽくなりますが、十分に描ききっていて、おなかいっぱいな印象のある映画です。

ボンボンの祖母が、朝ドラによく出てくる"怖い昔気質のおばあちゃん"で、女系家族を守ろうとするあまり、ボンボンにちゃんと嫁を取ることも許しません。で、成り行き上メカケが二人も三人も出てくる。ボンボン一代記なのに第二次大戦もはさまれていて、焼け跡に祖母と母とメカケがぞろぞろ集まってくる図は大いに笑えて壮観です。

3人のメカケ(おなじみ京マチ子若尾文子、それにモダンガールの越路吹雪!)が風呂場で将来の計画をしたたかに語り合っているところをボンボンが目撃してショックを受けて、一切女遊びから足を洗う・・・というオチ。これは女性作家にしか書けない、男から見ると恐ろしい結末なのかもしれません。女は生き延びるのがサガだからね・・・。
とても面白い1本でした。以上。