映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

新藤兼人監督「愛妻物語」12

新妻物語かと思ったら違った。失礼しました。

新藤兼人 私の十本」をご寄贈いただき、”読んでから観るか!?観てから読むか!?”(どっかで昔聞いたような)と迷ったのですが、1章だけ読んでみたところ、これは絶対映画が先だ!と思い、さっそく入手しました。

しかしTSUTAYA宅配レンタルでは扱ってない。買うかー!とAmazonで検索し、見つかった中で一番安い新品を注文したのですが…届いたDVDは…ジャケットは明らかにカラーコピー、定価1800円と書いてあるのに380円で売っている。これ…大丈夫でしょうか。DVDはチャプターも予告編も情報も何もなく、本編だけ。音声レベルが極めて低くて、初めて最大まで上げてしまった。…でも問題は中身です。とにかく観ました。

中身のことをいうと、日本の映画界をずっとけん引してきた大御所、新藤兼人の監督デビュー作です。脚本家の修業をしていた頃、妻の励ましで苦しい時代を乗り切るのですが、やっと芽が出そうなときに妻は病気でわずか27歳で亡くなってしまいます。そのエピソードを、感傷に走らずていねいに大切に描いた作品です。
主演は宇野重吉乙羽信子乙羽信子が明るくて強くて可愛い。宇野重吉は、年齢を重ねて枯れてきたのかと思ってたけど、こんなに若いころから、というか、若いころの方が体が弱そうで線が細いです。何も知らずに写真だけ見たら、結核で死ぬのは夫のほうだと思ったに違いない。

そして感想:この奥さんみたいな人生を送りたかった〜!
昔、プロのミュージシャンを目指してる友達に、こんな感じの奥さんがいました。きゃしゃだけど思い切り元気で明るくて、夫の才能を信じていて、いっしょうけんめい支えてた。母が子を思うようだった。彼のことを言うとき、いつもちょっぴり自慢げだった。あの夫婦、今どうしてるかな…。彼女は心底幸せそうだったけど、私はそこまで自分の周りの人を守ってあげられなかった。自分自身、1つの目標に向かってひたすら努力することができないままだった。

ここまで誰かに思われたら、生かされてるっていう気持ちでがんばれるのかな。
一途に努力し続けること。一途に努力し続けている人を心から応援すること。才能のある人の才能を信じること。邪心と闘って勝つこと。自分に勝ち続けること。…学校や職場やいろんなところで、本当に尊敬できる人たちに出会って、いかに自分が調子のいいニセモノか思い知ったけど、思い知ってるくらいが、やっと少し謙虚になれてちょうどいいかなと思う。

憎しみの連鎖からはなにも生まれないけど、愛することで人はパワーを得るし、与えられるし、そうやって生まれた作品で人を感動させることもできる。語弊をおそれずに言うと、女性の仕事は夫や子供を愛することなのかもしれない。(男のほうは、心から尊敬されて大事にされるような人間になること、かな)

本のほうの感想は、読了してから書くことにします。今日のところは、以上!