映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

伊藤俊也監督「女囚701号 さそり」25

和製KILL BILL。…うそです、あっちがアメリカン・サソリ。
(ご存じない方へ:この映画はクエンティン・タランティーノのFavoriteで、キル・ビルでもこの曲のテーマ曲「恨み節」が流れてるくらい。自分を裏切った男への復讐が中心になっているところも、眼光鋭い美女が切りまくるのも、この2つの映画には共通点がいっぱいあるのです)

1972年作品。新藤作品ばっかり見てて、すっかりマジメになった頭にドカン!ときました。合成着色料で舌が真っ赤になる氷イチゴを一気に食べて脳天にキーーンと来た、みたいな。

70年代の劇画と聞くと「怖い、暗い、大人の男の人の読むいやらしいマンガ」という印象です。小さいコドモの頃、病院の待合室とかで本がそれしかなくても手をつけなかったジャンルです。こんなに好奇心の固まりの私でも。…だから、KILL BILLは全部見たのにこの映画をみる勇気がなかなか出ませんでした。

始まったら、やっぱり「ひどいなこれは」。(こんな言い方で本当にごめんなさい)
だってものすごく美人で若い女囚たちがみんな裸で歩かされたりしてて、警官たちがマジメな顔して叩いたりするの。まさにあの頃の恐ろしげな劇画の世界です。

でもこの映画には、三流の部分もあるけど、超一流の部分も確かにあります。中間がない。このバランスの悪さはいったい何なんでしょう?

女優さんがみんな良くて、囚人服も絞り染めでとってもオシャレなのですが、なにより梶芽衣子が世界映画史上に残るヒロインなのです。タランティーノが夢中になったのも、なるほどです。細い少女のような体つき、顔立ちもあどけなさ半分だけど、眼にこもった恨みの炎が、ときに真っ赤に燃え盛り、ときに真っ白く冷え切って、この美しさといったらありません。

終盤の「恨み節」だけをバックに、黒いつば広帽子、黒いコートワンピースのようなものをぴったりと着込んだ「さそり」が、必殺仕事人のように仕事を片付けていく絵は本当に秀逸で、MTVアワードが取れそうなくらいです。

最初は男の欲望の映画のようなので、DVDを借りても最後まで見ない女性も多そうだけど、むしろ最後だけ見てください!カッコいいから!

しかし本当にKILL BILLってまんまですね。めちゃくちゃでありえなくて暴力的でおもしろい、という性質からして。日本のマンガ文化ってなかなかすごい気がしてきました。この映画はタランティーノ好きの日本人ならmust seeといっても過言ではありません。タランティーノは何本か見たけど、KILL BILLに関してだけ言うと、「さそり」のほうがずっと素晴らしいと感じる箇所がたくさんあります。

この映画の監督ってどんな人なんだろう。忘れられそうになっている原作のマンガはどんな絵だったんだろう。…もうちょっとググってみたいと思います。以上!