映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

小津安二郎監督「小早川家の秋」31

1961年作品。日本って美しい国だな。と日本人でも思う映画。
3姉妹(未亡人の長女に原節子、次女に新珠三千代、縁談を断りつづける末娘に司葉子)とその父(中村鴈治郎)をめぐるひと秋のできごとを、テレビのホームドラマのようにさりげなく描いた作品です。

鴈治郎さん「浮草」の続きみたいに、この映画でも愛人宅に通います〜。この映画でも、ニカ〜ッと笑う、人の善さそうな笑顔がステキです。

小津作品の女性は、ほかの男性監督の例にもれず、ステキすぎてリアルじゃないのですが、"女性から見て好ましい品の良さ"があるんですよね。玉三郎的。「司葉子いいわね。あのワンピース、素敵」なんて会話を当時の女性たちもしたんじゃないかな、と思います。(この映画はカラーです。)彼の映画の女性たちは、前向きでまっすぐです。賢く、毅然としています。

ここでふと、「女性が描く、ステキすぎなくてリアルな女性」ってたとえば?…女性監督の映画はまだ一つも見てませんが、女性が原作の「もう頬づえはつかない」の主人公まり子とか?                                        
今村昌平の「豚と軍艦」は同じ年に作られた映画なのですが、並べてみると、古き良き美しき日本に対する思いが対照的です。
アメリカ人と遊びにでかける娘やその家族のシーンが、どちらの映画にもあって、どちらでも家族はそれを止めないんだけど、「小早川」では現代的で冷たい娘として描かれているのに対して、「豚と軍艦」ではしたたかに生き延びていく道の一つだと感じます。

本筋とは関係ないけど、原節子ってゲルマン系だよなぁ。男顔でいかついけど圧倒的に美しい。いつも、この人がもっと腹から声を出したらもっと迫力があるのかなと思う。力を出し切ってないような印象がなんとなくあります。優しいけど本当はきっと力が強いんじゃないかなぁ、とか。wikipediaによるとご健在のようですが、引退して久しいので、いまどんなに美しく年を重ねられているか、見てみたいなぁと思ったりします…。以上。