映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

緒方明監督「私立探偵濱マイク TVシリーズ1 33→1の神話」33

2002年作品。「濱マイク」シリーズは林海象監督で永瀬正敏が主人公の映画が1993年から1996年の間に3本公開された後、2002年に毎回違う監督で12回TVシリーズが放映されました。私はTVシリーズではまって映画も一通り見ましたが、改めて見直してみたくなったので、確認しつつ感想を書いてみます。映画の方はレンタルしてないようなので、とりあえずTVの方だけでも。(ほぼ映画の手法で作られていると思うので、映画としてブログを書いていきます。)むしろTVシリーズのほうが好きかも。映画にあったシリアス感が薄くて、永瀬もこなれてるし、1監督1本に打ち込んでるのが魅力です。

私立探偵の濱マイクは貧乏でオシャレで軽いけど、意外と苦労人で面倒見がいい。灰色の会社人生の中にいるとみんな一度は憧れる”自由!”を体現している感じです。「寅さん」だって同じアウトロー方面のスターだけど、カラーの違いが時代を表してる?濱マイクのキャラクターは、強いて言えばルパン三世に似てるんだけど、「国民的人気者性」はナイな。

ストーリーは、毎回謎めいたタスクがマイクに与えられて、彼がさまざまな人と出会ったりぶつかりあったりしながらタスクを解決していくうちに、最後にはあたたかい気持ちになれる、現代のおとぎ話的なストーリーです。

オシャレだけどただのファッション映画じゃないよ。シリーズの中でも、この作品は特にストーリーがすぐれていると思います。ので、今回はネタバレなし。時代をよく映していて、今見直してみると、あの時代のことがいかに忘れられているかを思い知って、人間ってほんとに学習しない生き物だなぁと思ったりします。

ロマンチックという言葉が冒険への憧れを表すとしたら、このシリーズはとてもロマンチック。「探偵」「横浜」「映画館の屋上」「孤児院」「11歳下の妹」「情報屋」…。

マイクのファッションってたとえば、フェイクファーのど派手なコート、どこで買うんだこんなのという花柄のぴたぴたのシャツ。ネズミみたいに大きな靴。安っぽいファッションって自分が着るとペラペラだけど、カッコよく着るってこういうことなんだな、と。

ものすごく低感度のフィルムで撮った写真みたいなキメの荒い画像。…なんとなく、9時に寝て7時に起きてた7歳の頃に憧れてた、一度も見たことのない深夜の世界、みたいな、未知のスリルが思い出されるから、こんなに惹かれるのでしょうか。

役者さんもいいです。香川照之の狂いっぷりが素晴らしいし、ちょっとしか映らない脇役も含めて充実してます。
テレビドラマにも、こんなに凝縮された良いものがあるのです。一度もこのシリーズものを見たことがない人がいたら、ぜひ見てみてください。ほんとに。

以上!