映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

山中貞雄監督「丹下左膳余話 百万両の壺」36

また帰ってから映画見てしまった。

なんと1935年作品。昭和10年です。すごく面白かったです。
カラっとした笑いの、明るい時代劇。

あるお侍が相続した小汚い壺に実は財宝のありかが隠されていることがわかって、そりゃ大変だと戻ってみたら、奥方が屑屋に売り飛ばした後だった。屑屋から金魚鉢代わりにその壺をもらった小僧は、父親を亡くしてひとりぼっちに。その子を引き取ったのが片目・片腕の剣豪、丹下左膳で、居候している射的屋のおかみと一緒に子育てを始めるが、そこに壺をなくしたお侍がやってきて…。

店のおかみが、非常にドライで現金な美人で峰不二子的。殿さまの奥方もお人形のように可愛いのにいちいち言うことがキツかったりして、男はみんな強がるばかりで女の尻に敷かれています。なんだか落語の中のような、「笑点」的な、男も女も腹の底から笑える世界です。

屑屋の二人のうち一人が、今でいう志村けんの「変なおじさん」風で、見てるだけで笑えるのですが、どこかチャップリンぽいなーと思って調べてみたら、チャップリンは1932年に初来日してるんですね。この喜劇映画のセンスの良さといい、屑屋のキャラクターといい、影響受けてるんじゃないかな〜?

店のおかみは阿川泰子に似てるなぁ。で、店の女の子はデビュー間もない松田聖子みたいにぽっちゃりしてて可愛い。この松田聖子的女優は深水藤子といって、1980年代に林海象の映画に出ているらしい。サワリだけ見つけて見てみたら、とても美しい70代でした。

こんな監督や脚本家や俳優たちを育てた明治って、どんな時代だったんだろう。とても近代的で進歩的な印象だけど、主演女優がもと芸者で芸名が「喜代三」って、そこだけちょっと別世界な感じですね。

というわけで、以上。