映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

プレット・モーゲン、ナネット・バースタイン監督「くたばれハリウッド」47

2002年作品。これは、この間見たばかりの「ローズマリーの赤ちゃん」、「チャイナタウン」のほかにも「ゴッドファーザー」「コットンクラブ」等々、パラマウントで多数の名作、ヒット作を”監督”でなく”プロデュース”したロバート・エヴァンスの自伝を映画化したものです。

大根役者としてスタート、実業家として成功、呼び戻されて数本の映画に出演、役者の才能がないことを痛感してプロデューサーを目指す、映画は脚本だと考えて「ローズマリーの赤ちゃん」の原作を手に入れる、ポーランド人監督ポランスキーを登用・・・
数本の大成功作品、監督や役者選びの才能、「ある愛の詩」女優との恋と成功、ゴッドファーザーとコッポラの登用、パラマウント社の再建・・・
妻を放り出して仕事に熱中して離婚、派手な生活の裏の孤独、コカイン、解雇、殺人事件の犯人という誤報道・・・
人心を読めるやり手でプレイボーイ、世界のすべてを手に入れた後で失い、また手に入れた男の一生です。

感動しました。大笑いして、言葉を失い、特典映像のスピリット・オブ・ライフ賞授賞式の映像では泣けてしまいました。日本の映画監督は、企画や脚本も自分でやる人が結構いるのではないかと思いますが、ハリウッドはやっぱり分業が進んでいるのかな。大きな映画会社では、最初にアイデアがあってプロデューサーがいて、監督は脚本家、出演者等と合わせてセッティングされていくものなのかな。
そして現実の人の一生は、一本の映画と比べ物にならないくらい、長くてキツい。

ありがちなことですが、原題「The Kid Stays In The Picture(この小僧は出演させるぞ)」という、ロバートがプロデューサーを目指したきっかけの一言が「くたばれハリウッド」という本質から遠く離れた日本語になっているのは残念です。

プロデューサーって何?という私の疑問の答に大きく近づかせてくれた1本。彼のプロデュース作品をいくつかじっくり味わった後で見るべき作品です。いい映画をこのところたくさん見てますが、中でも特に鮮烈な印象を残してくれました。

くだらないと言われそうですが、プロデューサーとしてのロバート・エヴァンズスティーブ・ジョブズの共通点は、いいものと悪いものの区別に関して迷いがないこと。・・・という気がします。いいものを完成させるための努力をするのは当然だし、区別がつかない人にいちいち説明もしないから嫌われる人には嫌われる。身内も傷つける。人としての幸せより、最高の何かを目指すことを重視する。で、これが泥臭いオヤジなら同情もされるのに、スマートだから憎まれる。・・・私から見れば、見た目がスマートだろうがオヤジだろうが、真摯に打ち込むことは尊いし、カッコイイ人の苦労もちゃんと認めてあげてほしいと思います。
以上。