映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

佐藤武監督「スラバヤ殿下」59

1955年作品。とっても楽しい娯楽映画です。
なぜか手塚治虫のアニメを思い出しました。
原作は「君の名は」で有名な菊田一夫
スラバヤというのはジャワ島にあるインドネシア第二の都市だそうで、同名のインドネシア料理店がいくつも検索でヒットしたりします。その名前を使ってインドネシアふうの酋長に扮する日本人の映画を作るというのも大胆な話です。

主演は森繁久彌、兄弟を一人二役で演じます。兄は原子力の安全利用開発で名高い博士、弟はビキニ海域や北海道の原子力実験のペテン師。兄の開発した技術を狙う各国のスパイから弟がまんまと情報料をせしめて逃げたり、ペテンがばれて追ってきた人たちから逃げ切れなくなった弟が南洋の種族の長に化けたり、バタバタと楽しい映画です。

1948年にインドネシアの有名な楽曲「ブンガワン・ソロ」「ラサ・サヤン」も有名なインドネシア民謡なのですが、日本では松田トシという歌手が1948年に売り出してヒットしたそうです。森繁扮するスラバヤ殿下が歌を口ずさむ個所で「ラササヤン」が混じっているところがあり、当時のインドネシア人気がうかがわれます。…といっても第二次大戦中、日本が占拠していたということで、日本のほうにはいい思い出があるのかもしれませんがインドネシア側はどうなんでしょう。

森繁のシリアスな部分とコミカルな部分を、この映画では二役で演じ分けているので、それぞれの持ち味が楽しめます。森繁久彌vs三木のり平ののインチキ外国語のやりとりが最高。

森繁がしのび足で歩く時の身のこなしの軽さが好きです。本当に器用な人の身体のやわらかさ、という感じ。

エンディングの前に殿下&オールスターズのダンスステージがあります。男の人の踊りは「スパリゾートハワイアンズ」にそっくりですね。

楽しかったです。こんな映画ならいくつでも見たいな〜と思いました。以上。