映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

新藤兼人監督「三文役者」87

2000年作品。原作を読んだら見たくなりました。
新藤監督作品にいつも出てくる殿山泰司の、監督の筆による伝記を映画化したものです。彼の出演した映画の一部や、彼と映画を作った人たちによる語りがところどころ実録として出てきますが、おおむね全編は別の役者によるドラマです。形としてはNHKのドキュメンタリーとかでよくやってる感じ。

主人公タイちゃんを演じるのは竹中直人。映画では彼の二人の妻は仮名になっていて、
鎌倉の妻に吉田日出子、タイちゃんより20歳も年下の赤坂の人に荻野目慶子。竹中と荻野目が、あつかましくも16,7歳頃からの自分たちの役を演じます。
本人の出演した映画=真実と竹中演じるタイちゃん=お芝居が交錯してふしぎな感じ。竹中はギラギラと脂っこい魅力があるので、あきらめたようなタイちゃんのかわいさとはかなり違う気がしますが、おもしろい映画でした。

本と違って、撮影中にスタッフや出演者みんなが暮らしたプレハブが再現されていて、汗臭そうな感じだったり、タイちゃんと赤坂の人が暮らす赤坂の界隈や、年をとったタイちゃんがぶらぶらする新宿や銀座の店に本当に行ったりするのが良いです。生きてるうちにドキュメンタリーを撮ってあげればよかったのにね。

ところで、乙羽信子の解説がちょくちょく入るのですが、彼女は「午後の遺言状」のすぐ後、1995年に亡くなったはず。これはどういう合成技術?

今日のところは、以上です。