映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督「恐怖の報酬」97

1953年のフランス映画。

仏領ベネズエラで一旗揚げようと渡って来たのはいいが、仕事がなく飢え死にするものが続出している。破格の給料でニトログリセリンを積んだトラックの運転手の募集がかかり、数人の男が応募した。途中は悪路の連続で、目的地に到着しないことも多い。到着しても頭が真っ白になった者もいる。リスクを取って、1台に2人ずつ、2台のトラックが走りだした・・・。

ニトロを積んだ巨大トラックの運転手が・・・夜通し飲んだ後で午前3時に集合して、そこでまた強そうな酒をひっかけてから出発。平気でタバコは吸うし、悪路はゆっくり行くと揺れるからと、飛ばす飛ばす。原油が漏れ出して池になっている上を通る。そこで行き詰る。小心者の行動はかえって危ない。でも調子に乗ると落とし穴に落ちる。

148分、2時間半もあると感じさせない名作でした。走り出すまでの30分のほうが、走り出してからの2時間よりも長く感じるくらいです。これが1953年の作品なんですね・・・。特撮なんてほとんどないけどこの臨場感、この迫力。圧倒されて引き込まれていきます。力技です。この映画を見て、自分も映画を作りたいと思った人はたくさんいるんじゃないかな。その後巨匠になったりとか。

登場人物の荒くれっぷりも大したもので、女なんて使い捨てって感じです。
でも映画面白いからもういいや。

いろんなサイトで、サスペンスとかホラーとか書かれてるけど、タワーリングインフェルノとかスピードとかのパニック映画の元祖って感じだなぁと思いました。刻々と移り変わっていく状況、時間との戦い。極限状態での人間ドラマ。誰にも流れを止めることはできない。

マリオって人とルイージって人が出てくるんだけど、これってスーパーマリオのモデル??ルイージのほうがスーパーマリオに似てて、マリオは二枚目なんだけど。・・・と思ってちょっとググったら、どうも違うみたいですね。

ちなみにその二枚目マリオを演じてるのは、名前は知ってたイブ・モンタン。いやーいいオトコです。これは女にもてるね。彼を追いかける女役のヴェラ・クルーゾーは、美人だし女性らしく見られようとオシャレするんだけど、やけに打たれ強くてケロっとしてるので、降り棄てられてもあまり心が痛みません。ちなみに監督の妻らしいです。

タイトル怖いし、軽い気持ちで見られる映画じゃないけど、映画好きが映画好きにぜったい薦めるだろう映画だと思いました。以上。