映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

キャロル・リード監督「第三の男」102

1949年作品。

市民ケーン」は1941年作品で、迫りくる戦争を思わせる不穏な空気が感じられましたが、こっちは戦後です。どこか前向きなカラっとした空気のある映画です。
闇取引とか、きらびやかな劇場とか、戦後のどさくさの荒っぽい熱気を感じさせます。
当時のウィーンには「ソ連地区」というものがあったらしい。がれきの山があったりするのも生々しいです。

ウィーンが舞台で、到着してすぐ事件に巻き込まれて、買ってもわからないし言葉すらわからない主人公が、戸惑いながら友人ハリーの死の真相を探ります。見ている人は、設定もドイツ語もわからないという主人公と同じ立場で、不安な気持ちでストーリーを追います。

彼が訪ねてきた友人ハリーが交通事故にあった現場には、3人の男がいた。1人目と2人目はすぐにわかったが、3人目の男はいったい誰なのか?

主人公のジョゼフ・コットンは、ジェームズ・スチュワートや、ロバート・レッドフォードケヴィン・コスナーが演じたような、まじめだけどズルいところもある普通のアメリカ人。

ハリーの女を演じたアリダ・ヴァリも素敵です。あと、出てくる猫がすごくかわいい。。
オーソン・ウェルズはどこか憎めない、愛きょうのある悪人がぴったりです。

地下に張り巡らされた下水道での大追跡はとてもスリリングで、その後のなにかの映画でこの場面を見たような・・・。複雑な構造の水路で、耳を澄ませて相手の動きを探ったりします。

面白い映画でした。満足満足。以上!