映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

藤田敏八監督「八月の濡れた砂」103

1971年作品。

ツィゴイネルワイゼン」で助演男優賞を受賞した藤田敏八が、あまりに良かったので、彼の監督作品を見てみました。

後に清く正しい熱血教師を演じた村野武範が、女子を強姦しまくる無軌道な若者を演じてます。41年前の日本は、ノーヘルメットでバイクに二人乗りする映画を撮っても公開できる社会。監督39歳、主演の村野26歳、輪姦される役のテレサ野田は、まだ14歳!

こんな内容だし、日活作品なのですが、「ロマンポルノ」に移行する直前の、これ自体は青春映画といってもいい作品です。イヤラしい場面はあんまりないので、そういうのを期待して見ないように。

浜で女の子を無理やり暗がりに連れ込んだりしてばっかりの、しょうのないワルどもが主人公。最近はネットで人を傷つけたり、いきなり刃物で人を刺したりする事件が多いけど、良くも悪くも、もっと直接的な人と人とのエネルギーのぶつかりあいがあった時代だなぁと思います。真っ黒に日焼けして、眼をギラギラさせて、大人たちに反抗する。「死んでやる!」と叫んで、ちゃんと服を脱いで崖から海に飛び込む・・・けど頑健なのですぐ浮かび上がって「簡単には死ねないもんだなぁ!アッハハ!」。

オシャレではないんだけど熱くて、泥にまみれても汚くならない、若者たちの真剣なエネルギーほとばしる映画でした。以上。