映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

是枝裕和監督「誰も知らない」136本目

2004年作品。
みんな知ってる、カンヌ国際映画祭、最優秀主演男優賞受賞作品。やっと見た。141分もあります。

奔放な母と、ほったらかしにされた子どもたち。母は戻ってこないけど、いっしょにいるときは楽しくてやさしい母だから、子どもたちはひたすら信じて待つ。待たずに待ちながら、今日を暮らし、明日を暮らす。大人から見ると健気、子どもたち自身はもうそうやって暮らすしかない。

甘くせつない子どもの頃の気持ちを思い出すのと同時に、大人としての重くて苦い気持ちが湧いてきます。

柳楽優弥くんは本当に素敵な子どもで、まっすぐで強く美しい目をしています。世界中が、カンヌの審査員が、彼の眼に惹かれるのは当然。かつ演技をしてないところが、さらに大人の胸を苦しくさせます。奇跡的な、半ドキュメンタリー的作品なので、この出演者に賞を授与するのはちょっと残酷ですね。そんな彼らの重荷あっての名作です。

韓英恵のすずやかさがちょっと救いです。以上。