映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

新海誠監督「星を追う子ども」188本目

2011年作品。

アニメーションです。
ジブリに似てる、とまで言うと語弊がありそうだけど、キャラクターの顔やストーリー展開、設定などに相似点があります。多分宮崎駿とこの監督の作品を両方見ている人は多いと思う。

画面の美しさは、ジブリとは違う美しさですね。ジブリは色がきれいだけどベタ塗りっぽい感じがあるけど、こちらは透明感が強くて光が多い。・・・他にもいろいろ挙げられると思います。

しかし、主人公がまっすぐ成長していったり、人工対自然という単純な対立がなかったり、「生」でなく「死」に向かって行ったり、という不思議な志向があって、なんかちょっと変なんです。

ヒロインであるアスナが出会って惹かれる少年があっという間に死んでしまって、しかも“死体で見つかったと人づてに聞く”というリアリティのない死に方なのにそれが手違いでなく事実で、その後も2回くらいしか回想シーンもない。

クリスタルのようなものを集めるでもなく、最後に第2の少年がそれを壊して使えないようにしてしまう。目標が達せられないことにゴールを置くというのが、なんとも不思議です。

美しい誰かに恋をして、それが成就しないことを志向する、かのような。抱き合って身体をくっつけて汗だくになるより、しみじみと想っているほうが美しいから。・・・みたいな感じ。

カタルシスのない、新月のような薄闇のような心地よさです。これからこの世界を極めていくと何が出てくるのか、ちょっと楽しみです。以上!