映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

吉田喜重監督「エロス+虐殺」194本目

1970年公開作品。

歴史に名を残す革命家大杉栄伊藤野枝、彼らの周りの人たちと、後に彼らについて調査するジャーナリストたちを映画にしたものです。

大杉栄って革命家というより、“関東大震災のときに、革命思想を持つ者として伊藤野枝といっしょに憲兵に撲殺された人”として知られている、と思います。
大杉栄は妻のほかに公然と伊藤ともう一人の愛人を持ち続けたのですが、伊藤野枝の方も夫と子どもを棄てて大杉に走る前にも夫がいたことがあります。自由になったはずの今の時代には、むしろなかなかいない、激情の二人です。

「完全版」というのを借りました。全部で216分つまり3時間26分もあります。ほぼ2本分。内容は第一部と第二部に分かれています。この映画は、大杉・伊藤の時代と、それを取材する女性ジャーナリストの時代が交互に描かれるのですが、第二部ではジャーナリストがインタビューしていたのが二人の長女だったはずが野枝自身にすり変わっていて、なかなか面白い展開です。

最初は、なんだか舞台みたいな観念的セリフや大げさな動きにちょっと鼻白んで見ていたのですが、だんだん大杉と3人の女の関係や、ジャーナリストとその周りの男たちのサイケで濃い関係が面白くなってきました。第一部で大上段に構えて自由恋愛だのなんだのとゴタクを言っていたのが、徐々に破たんしていきます。

全体的には、エロス+虐殺というより大正エロス+昭和40年代エロス(+死亡)、でした。面白いけど長いな・・・。

その後の岡田茉莉子細川俊之が、どこか不思議な芝居がかった演技をするようになったルーツがここにあった、と思いました。

廃版のようですが、Amazonにリンクを張っておきます。