1964年、英・米・ギリシャ制作。
これは面白い。テンポがよくて、生きてるっていいね、と思える映画です。
紳士的だけどおとなしいイギリス人男性がギリシャにやってきて、ゾルバという人懐こい男に出会う。このゾルバってのが、心のままに女を愛し、酒をくらって寝るという邪気のない人間で、人の心の機微に非常に長けている。イギリス人はゾルバを雇う。一回りも二回りも若いボスに、ゾルバはときに説教をする。「人生は短い、楽しまないとダメだ。」
炭鉱の中が崩れてゾルバが真っ黒な顔で埃の中から出てくる場面は、これこそがドリフの元ネタではないかと思わせるおかしさ。未亡人の昔話を聞いてやりながら、いつの間にか相手の心をすっかり開かせてしまうスムーズさ。難しく考えるからダメなんだ。と、顔をシワだらけにしてあったかく笑う。
死にそうな人がいると、その瞬間に一番乗りで家財をひったくろうと、ベッドの周りに人が集まってくる。黒い服を着たおばあさんたちが、エサを心待ちにしてるなんかの鳥のヒナのようで、怖いというよりおかしい。ゾルバに「怖くないよ、大丈夫」と抱かれて息を引き取るマダムは、この上なく幸せな死って感じ。
で、家はあっという間に空っぽ。この底抜けに明るいハイエナのような人たちがまた、おかしい。
ゾルバを演じてるアンソニー・クインは味のある魅力的な俳優だけど、ギリシャ人でもなんでもなくて、アメリカ育ちのメキシコ人らしい。・・・そもそもギリシャ人ってのは一般にどういう人間性だと思われてるんだろう。美と愛と享楽をたのしむ人たち?イギリス人ってのはいい対比なのかもしれないけど、このボスと雇われ人はいい友情をはぐくんでいきます。だんだん、顔を崩して笑うことが多くなる。
「どんがらがっしゃーん」と装置が崩れたときも、なんだかロボットコンテストのような、十中八九失敗することが見込まれているものがやっぱり崩れたようなおかしさがあって、やっぱりゾルバは壊れたセットの中から這い上がる、いかりや長介のように頼もしく、まぶしい。ちゃんとやってみて、ちゃんと失敗することを経て、イギリス人「ボス」は一回り大きくなった感じですね。
あー、私も笑い皺がすてきな年寄りになりたい。以上!