映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

オリバー・ストーン監督「JFK」226本目

1991年作品。もうそんなにたったんだ。

3時間もあるのにすごい詰め込みっぷりで、これは本当は90分×5回くらいのTVドキュメンタリーとして作るのが中身には合ってたのかな、と思う。でも劇場公開する映画をケビン・コスナー主演で作ることでしかリーチできない人たちがいるのでしょう。

内容はすごく面白かったし、何も知らない私にすっかり「その次の大統領がすべてを指揮したのね!」と信じさせるパワーや説得力に満ちていました。監督の、戦争や不正を強く憎む熱いまっすぐな気持ちが伝わってきます。

ただ、これはマイケル・ムーアの“ドキュメンタリー”と同様、映像マジックに頼った説得映画であるということを忘れちゃいけません。「あなたたちは騙されていたんですよ!私がこれから隠されていた史実を暴きます!」といわれて、今度はそっちを丸ごと信じてしまって、「なんてことだ!今まで私を騙していた奴らを裁け!」と寝返るのでは、学んだことになりません。疑う心をもち、嘘を見抜き隠れた真実のキラっとするひらめきを見つけられるようになることを目指すこと・・・が、こういう映画を見ることの真髄だと思います。

政府の陰謀ってのは、ヒーローアニメに出てくる悪の軍団みたいに、気持ちよく憎める存在だけど、本当に人の心を操れる人はご近所にも同じ部署にもいるし、どこの悪の組織にも正義感の強い人はいる。最近の小説や映画は、仮想の暗闇が広がって行く、というような作品が多くてちょっと不穏です。

2029年と2039年に秘密文書が公開されるのを見届けたい…と思います。以上。

(DVDは数種類出てるけど、どれも入手困難みたいなので、リンクはナシ。)