映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

クロード・オータン=ララ監督「肉体の悪魔」228本目

ひとり“ジェラール・フィリップ映画祭”、第二弾。1947年作品。

ごめん・・・このタイトルを見て、「エロス系」の映画だと思ってた。

実際のストーリーは、第一次大戦中、ある繊細かつ大胆な美少年が、婚約者が出征中の年上(どのくらい?)の女性に一目ぼれして、追っかけてものにして、彼らが結婚までしたのにも関わらず、留守宅に入り浸って子どもまで作ってしまう。そしてやがて別れの時が・・・。

王子様キャラのジェラール・フィリップ25歳が17歳の高校生を演じ、実は当時同じく25歳のミシェリーヌ・プレールという女優さんが年上の人妻を演じます。見た目、それほど年齢差を感じさせなかったのは、当然か・・・。

ストーリー的には、不適切だけどBoy meets Girlで、あまりにふっと恋に落ち、親や周りの人たちに何と言われても離れようとしないところが、映画的にはシンプルすぎるくらいです。でもこの小説は原作を書いた作家の自伝的作品と言われてるそうで、こういう映画的事件がないところが現実らしいのかもしれません。「ラマン」みたいに。

ジェラール王子は今回はシンプルな学生のシャツ姿。この人の風貌は独特ですね。知的でアゴや鼻が細くて、豊かさとか柔らかさを感じさせません。安心感より落ち着かなさを感じさせる。与えるより愛情を奪う子犬的な魅力。

二人が別れを話し合うときに、「僕はこれを小説に書くよ」「別れた後どうなるの?」等と話す、っていうのは、すごくありそう。ジェラール王子は「僕はそのあと自殺するんだ」とか言うくだりがあるのですが、夭折した原作の作者はどんなふうに亡くなったのか・・・。

愛、といか、家族の情愛とかじゃなく若い男女の間に発生する性愛ってのは、激しくいつの時代も彼ら自身を引き裂くものなんですなぁ。。。という映画でした。以上。