映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

パク・チャヌク監督「JSA」229本目

2000年韓国作品。

JSA、それは南北の境目、板門店を中心とした「Joint Security Area」。私が去年韓国ツアーに行ったときに近づいたDMZ=DeMilitarized Zone よりも北にある、世界で一番緊迫した区域のひとつ。

その現実を見せつけられるだけで、平和ボケした私はとても悲しい気持ちになります。国が分断されるということは、あっちからあの国が、こっちからこの国が、自分たちの利益のために争いをしかけて、もともと暮らしていた人たちがたくさん命や財産や大切ないろいろなものを失い、今も離れ離れになっているということだから。

こんなバックグラウンドの上で、ほんのひとときの友情なんて見せられたら、切なくて胸がいっぱいになってしまいますね。

釜山港に帰れ」という歌が日本では男女の歌として知られてるけど、韓国では兄弟の歌だと聞いて「ふーん、なんで?」と思ったのは遠い昔だけど、コリアンスピリッツにおいては「兄」という存在が大きいんだなぁと、この映画で改めて思いました。可愛い弟たちを自分が収めてやらなければならない。という兄的な強さ、大きさ、あるいはカッコつけと、そんな兄を慕い敬う弟的な気持ち。その間に立てるのは中立国の人間で、かつ女性でなければならなかったんでしょうね。

イ・ビョンホンはナイーブな役をよく演じてるし、ソン・ガンホは大人で、彼がいたからこんなありえない友情が生まれたと思わせてくれる。それにしてもイ・ヨンエは可愛い。

“あんな友情があったらいいのに・・・だけど無理なんだよ!!”っていう、お隣の国々の普通の人たちの叫びが聞こえてくるような映画でした。

ミステリー仕立てもよくできてます。というか真相はなんとなく見始めてすぐ想像できるけど、そこに至るまでの見せ方がきれいです。韓国映画って仕込みが多いよね。楽しませてくれます。うん。以上。