映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ルーベン・マムーリアン監督「今晩は愛して頂戴ナ」230本目

1932年作品。

もう「頂戴ナ」と漢字+カタカナで来られただけで借りちゃいますよ。
そういうのが粋だった時代っていえば、日本では東京ブギウギな感じでしょうか?(それは1947年らしい、ちなみに)

ヨーロッパの昔ながらの街角、みたいな状景から映画は始まります。普段通りの街、でもリズミカルな工作機械の音、ステキな女性の笑顔、なんだかウキウキしてきます。
そうしたところに、調子のいい男が登場してフランス語で歌い始める。でも部屋を出ると英語で街の人たちに歌いかけ、話しかけます。これは楽しい。パリが舞台の英語のミュージカル映画なのですね。街中を、今度はマラソンの選手たちが駆け抜ける。「女のところにいたら夫が帰ってきたので、下着姿で逃げ出した」という男がその中に混じっていて、ゼッケンの代わりに八百屋の値札を持って走っていたりする。

監督も音楽も俳優も、この映画を作れるのがきっと楽しくてたまらなかったんだろうな。絵が動いて歌も一緒に記録できて、なんてすごいんだろう!という夢や希望が伝わってきます。

ただの仕立て屋が王女と出会って愛し合うようになり、ひとときの恋に落ち、恋の歌を歌いかわす・・・。夢の中でのデュエットもお洒落。

男爵と呼ばれていた彼が実はただの仕立て屋とわかって、貴族のみなさんはまた歌い出す。淑女たちは「オゥ!」「オゥ!」犬は「キャン!」・・・実に実に楽しいです。
仕立て屋でもいい、私が間違っていたわ・・・と馬に乗って列車を追いかけ、その前に立ちはだかる王女、ステキ!

いやーこれは名作だ。作り手に夢がある。点数をつけるなら5点満点の4.5くらいはつけたいなぁ。以上。