映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

降旗康男監督「冬の華」234本目

1978年作品。

高倉健が主演の、現代やくざ映画です。
健さんのルックスは不変なのですが、まわりに目を移すと、池上季美子が女子高生だったり、やくざの会長がシャガールを買いあさってたりと、時代を感じされるディテールがあります。

敵の組の人間は平気で殺すくせに、殺した男の娘をムショからずっと面倒をみたり・・・昔ながらの日本の武家社会的倫理観の現代化が、ちょっと社会の裏側に向かってしまった・・・。

その世界の中で美しいとされるものが、お譲さん学校に通う「・・・ですの」というしゃべり方をする、バイオリンを抱えた美少女、なんだな。

この監督は健さん映画をその後もたくさん撮ってるし、それ以外の任侠ものもたくさんあるけど、最近そっち系はないですね。これは、最近の風潮で非合法なものを切り捨てて清廉潔白でいこうというのか、やくざが渋谷ギャング的な、日本的情緒のあまりない世界になって映画化できなくなってきたのか。

そんな世界そもそもおかしいよ!と思うけど、じゃあ戦争ってのはなんで存在するんだ、あれは純白の家族を守るために敵を殺すということじゃないのか、そういう世界に行かされた人たちが自分を正当化するためにこういう考え方になっちゃうんですよ、と言われたら反論が難しい。

外国の人が見たらどう思うのかな。国にも人にもよるんだろうけど、共感する人もいるのかな。