映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ロジェ・ヴァディム監督「危険な関係」236本目

ひとり「ジェラール・フィリップ映画祭」のつづき。
1959年、彼の晩年、といってもわずか36歳のときの作品。
すっかり大人のいい男になってます。何をやってもスマート。そしてスタイリッシュな夫妻の妻のほうは「突然炎のごとくジュールとジム、のジャンヌ・モローです。

この夫婦が男女関係に関して、それぞれ放蕩の限りをつくしていて、そのせいでいろいろ起こるという作品。
ジェラール氏は今ハリウッドならジョージ・クルーニー、日本なら生田斗真といった絶対的な二枚目で、絶世の二枚目以外の役は回ってこないし、いい人より悪い人の役の方が多くなってしまうという位置づけです。(ジョージクルーニーはコメディもあるか)それにしても、悪魔とか危険とか、背徳的な役どころばかりなのは、この頃のパリ映画界ではそういう映画ばかりが求められてたんでしょうかね。人の不幸は蜜の味?

ジェラール氏はいつもエリートの役で、毎日毎晩とっかえひっかえ女性を口説いてるけど仕事は有能にこなしてどんどん昇進していきます。英雄色を好む・・・。語弊があるかもしれないけど、仕事をバリバリこなす人にも、遊ぶ時間は必要なので、日本の会社でも残業ばっかりしないで仕事と関係ない人たちと趣味や遊びに没頭できる時間を作った方がいい、と思う。

一方、同じくらいワルい妻のジャンヌ・モローも、怖くていいですね。彼のかわりに、不倫相手に別れの電報(!)を打ってやりながら、タバコをぷか〜っとふかすあたり。

そして“放蕩の果て”的な、天罰のような結末が訪れます。死はあっという間だ。
教訓があるように見せかけることで、放蕩のたのしみを覗き見る、若干悪趣味な感じの、どろどろに熟したメロンとハムで澱のたまったワインを飲むような映画でした。
こんなんばっかりだけど。以上。