映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

五所平之介監督「マダムと女房」244本目

1931年作品。

面白かった!私の大好物、おおむかしの映画です。トーキー第一弾とかで、今の映画とおなじように見られるのですが、さすが音質が悪くて、聴きとりづらい。画質も悪いんだけど、意外と気になりません。

仕事嫌いの劇作家が、あちこちで身勝手でユーモラスな行動を起こす、愉快な映画。
田中絹代がまだ22歳で可憐。しかしすでに芯の強さを感じさせます。チャランポランな劇作家の夫役は渡辺篤という役者さん。隣に住む現代的なマダムを演じるのは伊達里子という女優です。

隣の家から聞こえてくるジャズと呼ばれている音楽が、楽器はジャズだけどまるで当時の日本の流行歌のメロディなのがおもしろい。きっと、絵と音を別録りする技術どころじゃないから、撮影現場でジャズバンドが実際に演奏をしていたはず。日本初のトーキー映画を撮影していた現場のにぎわいや熱気を想像すると、ぞくぞくします。

冒頭のキャスト表示の文字フォントが、アールデコっぽいのも面白い。1925年のパリ万博がアールデコの中心なので、じっさい影響を受けてたんでしょうね、当時の日本のモダン好きの人たちは。

冒頭で、画家が絵を描いているのを劇作家が邪魔するシーンがあります。画家はベレー帽。劇作家はその後ハンチング帽をかぶって隣の家に行きます。この類型的な帽子の選び方が、このとき既にあった・・・いつ始まったのか知りたいです。

妻「近頃のエロでしょ?エロ100パーセントでしょ!」
妻が隣のマダムにやきもちを焼いていうエロってのは「セクシー」っていう意味なのに違いない。エロ100パーセントは超セクシー。かな。

ほかにも、いろいろ魅惑のディテールがいっぱいです。見て良かった。