映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ダニー・ボイル監督「サンシャイン2057」248本目

2007年作品。

「極限状態」を描く映画をいくつか作っている監督ですが、これは太陽を再生させて地球を救うために、太陽に向かってマンハッタン島ほどの大きさの核爆弾をぶち込みに行く宇宙船の船内の映画です。

映画の世界ではよくこの「極限状態」という言葉を使いますが、エレベーターに閉じ込められたとかでも極限というし、わりとすぐに逃げられることもありますが、この監督は「極限状態」の定義も、そこで人がどうなるかという分析や描写も、じつに地に足がついていて、深く実質があります。

この映画の場合、最初に同じミッションに挑戦して失敗した「イカロス1号(特攻隊的なネーミングだ)」の存在というか不在が最初からとても大きく、最後までこの映画の鍵となります。人類っていうものの存在意義にまで踏み込むんで深遠さを追い求めるかんじは、「2001年宇宙の旅」を思い出します。

108分の作品中、75分あたりからちょっと超自然的な(現実にありうると言われればありうりますが)成り行きになっていって、あんまり嬉しくない「そう来たか」という感覚になります。

ダニー・ボイル作品には、クールな静寂の場面が印象的に使われますね。宇宙の静寂は真空を思わせて背筋がすーっと冷たくなります。
そこに浮かぶ船体とかに3DCGがたくさん使われていて、そのメカメカした感じが理系男子に受けそうな美しさです。

主人公キャパを演じるのは「28日後」で主演したキリアン・マーフィー。この人の、ふてぶてしさと、困ったときの表情がいいですね。なんか生々しくて。
キャプテンに真田広之。カッコイイし知的でいいけど、なにか内向的なシャイな感じがして、出しきれてない?という気がします。

こういうミッションに出る人たちは、身体もだけど精神もそうとう訓練を受けていて、仲間が助からなくなる判断をするときに、これほど嗚咽したりしないかもしれない。たまにはそういう、乱れない人たちの宇宙ミッションの映画も見てみたいなぁ。