映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ジョセフ・フォン・スタンバーグ監督「嘆きの天使」253本目

1930年のドイツ映画。
ひとりマレーネ・ディートリッヒ映画祭、開催中。

これは彼女のドイツ(ワイマール共和国)時代の作品で、ドイツ初のトーキー映画だそうです。この映画で彼女はハリウッドに注目され、その後世界進出を果たした・・・という。当時の彼女の輝きはいかに??ドイツ語の発音や歌声はどんな風だったんだろう??

ローラ・ローラっていう踊り子の役を演じていて、かなり可愛くて美しい。誘い込むような不思議な魅力があります。でも「間諜X27」や「上海特急」のような謎めいた感じはなく、下町のたくましい踊り子って感じ。腕や背中は意外とみっちりとしてるけど、ひざ下がやけに細長い。このとき既に29歳で子どももいて、お嬢ちゃんって感じではありません。

カタブツの大学教授をからかったり誘惑したりするので、とんでもない悪女のように言われたそうですが、踊り子から見れば可愛いオジサンだったはずで、からかうのも彼女たちの日常なんじゃないのかな〜。オジサンに対する態度は、きついことも言うけど優しいところもあります。徹頭徹尾イジワルなのは奇術師ですね。職場のパワハラの最たるものです。

教授から彼女の付き人に“身をやつした”男が、なじめずに荒んでいく様子は哀れだけど、年をとってからの別の業界への転職は誰だってそりゃ大変ですよ、郷に入れば郷に従うっていうし、プライドなんか棄てて真剣にがんばるしかない・・・って何の話でしたっけ。この役を演じたエミール・ヤニングスは大変な熱演です。最後は懐かしい場所にたどり着いて、女に迷ったことを悔いたのかもしれません。そういう教訓を込めた映画なんだろうか?

マレーネさんの歌声は、澄んでいて張りがあって、とても素敵でした。なぜか懐かしいような、ずっと聴いていたい歌声。彼女の魅力は、冷たいようでどこか庶民的なところだなぁ。以上。