映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

マキノ雅弘監督「次郎長三国志 第三部 次郎長と石松」268本目

1953年作品。

次郎長三国志」ってのは連載小説の映画化で、9作も作られたうち、これは3作目だそうです。この作品では、森の石松森繁久彌と、旅の途中で知り合っていっしょに旅をするようになった二枚目の三五郎=小泉博と、賭場の女、お仲=久慈あさみがからみます。

お仲が酔って口ずさむ「あしたは、いっしょに〜♪」って歌がなんともいいですね。とてもきれいな声で、女らしく艶っぽくいい調子。最初の晩に石松と三五郎はスッテンテンに負けてしまうのですが、お仲がその後部屋に来て「最後の2回はイカサマだったんです、あいすいません」とお金を返しに来る。石松は彼女に惚れてしまうのだが・・・以下ごにょごにょ。
一方次郎長おやぶんはふとしたことで牢獄の中。・・・1部2部を見てないので誰がなんだかよくわかりません。が、二枚目で人格者のこの人が次郎長さんですね。

森繁と小泉の二人ともが元NHKアナウンサーってのが笑えます。今は、辞める人はいても俳優になったって話はあまり聞いたことがない気がします。しかも二人共演なんて。

森繁は、この頃のお調子者の役をやってるときが一番素敵。この映画では真っ正直な役柄だけど、「なんとなく腹で何か考えていそうな切れ者」が一番はまり役だと思っているのでちょっと物足りないかな。

場面変わりに浪曲が入ったりします。今は時代劇をやっても、若い役者さんは浪曲になじんでないし、「てやんでぇ」的な本物の江戸っ子を見たこともない人が多いだろうから、そういうのを自然と演じるのは難しいんだろうな。

この映画は、エピソードはあるけど起承転結じゃないので、1つの映画作品として見るのは難しいけど、TVシリーズだったらかなりいいと思います。