映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

トム・マッカーシー監督「扉をたたく人」269本目

2008年作品。原題は「The Visitor」。
「The Reader」は「愛を読む人」。日本語はコンテクストがないとだめらしい。

アメリカのアパートの空き部屋のにおいがしてくるような空気感。
最近同じ空気を見たような・・・。「プルーフ・オブ・マイ・ライフ」と「トイレット」ですね。「トイレット」のように異質な人が現れるんだけど、こっちはシリアスです。

カタブツの白人大学教授の留守宅に住みついていた、不法移民の若い二人。たまたま彼らを受け入れることにして、彼らの奏でるパーカッションをいっしょに叩き、いっしょに行動することから、新しい世界が開けていく・・・が、ちょっとした誤解で移民の彼は逮捕され、そのまま拘留されてしまうことに・・・。

なんとなく、ストーリーはハッピーエンドかアンハッピーエンドの二択という感じが最初からしているのですが、極端には振りきれませんでした。

役者さんはみんな魅力的。リチャード・ジェンキンズが演じる教授の、度の強い眼鏡の奥のマンガみたいに大きな青い目。ハーズ・スレイマンが演じる青年の、明るいけど諦めたような表情。ダナイ・グリラが演じる女の子の、無邪気な笑顔。ヒアム・アッバスが演じる青年の母親の、腰が据わったようでいて傷つきやすい女性らしさ。

ただ、カタブツの大学教授vsアフリカンドラム、という対比はわかりやすすぎてちょっと説教臭い気がします。そこまでわかりやすくしないと、ついてこないものなのかな。物語としての面白さを、もっと極めてもらっても良かった、気もしました。