映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

チェン・カイコー監督「さらば、わが愛〜覇王別姫」283本目

1993年の香港映画。

中国/香港の映画は久しぶりで、1回目に見たときは全然入って行けなかったけど、2回目はまるでそんなのウソのようにはまり込みました。

よーく練られていて、細部に行き届き、かつ全体では歴史的な壮大な絵を描くことに成功しています。登場人物のそれぞれが、人間として生きてるし、大げさすぎるところがあまりありません。政権の移り変わりの中で、もてはやされたり蔑まれたり、個人の愛憎を超えて、あの国全体を描いたこの監督は、すごいです。

厳しく美しい京劇の世界で、彼らはずっと同じようにやってきたのに、時代のほうが勝手に変わってしまう。・・・なんか、こういう大きい絵を描かれてしまうと、役者さんや舞台設定を超えてぐっと来てしまう観客=私って単純なのかな。

レスリー・チャン美しいですね。彼の子ども時代を演じた子たちも、妖しげで可愛らしい。しかしレスリーさんって、京劇の格好をしてないときのほうが女性的に見えるのが不思議。コン・リーと向き合うときなんて、イジワルなおかまさんって感じです。彼が亡くなってから10年。新しいスターがどんどん現れて、逝ってしまったスターは忘れられてしまうのかなぁ。

コン・リーが、この間見た「SAYURI」のときと同じルックスなのがすごい。SAYURIのとき40歳、覇王別姫のとき28歳なのに。

3時間近い大作だけど、序盤の成長ドラマ、中盤の愛憎物語、後盤の歴史物語で飽きさせません。まんまと入りこまされた力作でした。