映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

園子温監督「希望の国」290本目

2012年作品。DVDになったばっかり。

難しい題材だと思います。地震津波に関しては、目に見える結果は出揃っているけど(精神的、社会的な長期にわたる影響など、まだこれから見ていかなければですが)、放射能の本当の影響はまだ出ていません。判別できるほどに出そろう時間はまだたっていません。

チェルノブイリと福島の後に長島県というところで地震津波原発事故が起こったという設定だけど、最悪の結果が出る前に希望を失ってしまう人たちを描くところまでしか行けない。。。現実がそうだから。

地震に至るまでを最初の10分で描写し、その後も中心となるのは出来事というより家族の思いの移り変わりです。

映画全体にちょっと急いで作った印象があることが少し物足りないけど、がれきがまだある場所で撮らなければいけなかったのかもしれないし、今すぐ作って日本じゅう、世界じゅうの人たちに発信しなければならなかったのかもしれない、と思います。

希望の国」ってタイトルだけど、希望は失われるところしか描かれてません。まだ光がまったく見えないのに、ラストに「希望の国」ってタイトルが大きく出てくるところが、重苦しくて絶望的な気持ちになります。「希望」がなくても「光」がなくても「愛」があれば生きられる、愛がいちばん大切・・・

ところで・・・立入禁止区域とか管理するとき、日本の役所ってほんとに厳密だから、あっという間に廃墟になってしまって、スラム化する余裕もなさそうだな。避難区域の中で、誰にも見つからずに、殺処分になるはずだった家畜や、廃棄処分になるはずだった野菜を育てて、食べながら生き延びていく人たちの生命力を描く、というような映画があればいいのに。園監督に今撮ってほしかったのは、そういう映画のほうかも、と思います。