映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ジョセフ・フォン・スタンバーグ監督「モロッコ」314本目

1930年という大昔に作られた映画で、マレーネ・ディートリッヒゲイリー・クーパーという大スターが出演しています。

舞台がモロッコということで、エキゾチックな魅力を期待したたんだけど、エキゾチックなのは地元の人たちだけで、マレーネはいつも通り、氷のような微笑を浮かべた麗しい歌手です。彼女のショーの部分は、相当簡単なものだけど、男装でタバコを吹かすところも、にこりともせずにリンゴを売り歩くところも、非常に魅力的です。でも歌は「嘆きの天使」のほうがよかったな。この映画ではやけに歌が下手に感じられるし、張りのある声の魅力も出きってません。

映画全体は、90分ちょっとだけどときどき冗長な感じがあって、あんまり強い印象が残りません。ゲイリー・クーパーも、平凡なちょっとにやけた二枚目という感じ。ズルばっかりしてるし、彼女がそこまで入れ込むのが納得できない…。

この二人が初めてキスをするシーンで、さりげなく顔に団扇を広げて隠すのがちょっとシャレてていいですね。

ところでこの映画はスペイン領だった頃のモロッコに駐屯していた、スペイン軍の外人部隊に入ったアメリカ人男性と、モロッコの酒場に来た歌手とのロマンスです。これくらい時代をさかのぼると国境がかなり今と違っていて、調べて見ないとなんだかわからないですね。