1962年作品。
勘違いしてました。デヴィッド・ボウイとかドアーズとかがカバーしてる「アラバマ・ソング」が使われてる映画だと思ってた。なんかエキゾチックで派手で美人女優が出てるのかな、と。全然違いました。「12人の怒れる男」みたいな陪審員もの、法廷ドラマで、人種差別問題をシリアスに盛り込みつつ、子供たちをからませることで正義や愛についても考えさせる内容で、とても良い映画でした。アメリカ合衆国の歴史を考える上で、今とても重要な作品ではないでしょうか。きれいに勧善懲悪でまとめずに、弁護士の迷いや苦悩を最後に伝えたことの意義が大きいと思います。
自分たちより貧しい依頼人の気持ちをおもんばかる弁護士にグレゴリー・ペック。彼の出てる映画は「ローマの休日」しか見たことないけど、だいぶ貫禄が出てきて、「アメリカの良心」役にはまっています。彼は子供たちに「ダディ」とかじゃなくて「アティカス」と名前で呼ばれてる、という背景だけで、思い切りリベラルな家庭だということがわかります。この家では黒人のメイドが子供のお行儀をたしなめる場面もあるし、事件当時の設定は1930年代だけど、60年代にまだこんな映画が作られたということの意義を考えてみたいです。
ムラ社会の同調圧力ってほんとうに強い。日本でも強いけど、アメリカの田舎でも強いらしい。人間ってのは基本的にずるくて自分に甘い生き物だ、と改めてしんみりします。
原題「To Kill A Mockingbird」にこめられた痛みを消してしまう邦題「アラバマ物語」がすでに同調圧力だだとも思えるけど、この映画結局日本ではヒットしたんだろうか?
最後に少しだけ姿を見せる、すこし心の病気をわずらった男「ブー」を演じてるのはロバート・デュバル。ゴッドファーザーとか地獄の黙示録の大役を演じたイメージが強いので、名前を見てびっくり。wikiによるとこれが映画初出演だとか。
タイトルから、ちっとも見るつもりがなかった映画だけど、たまたま「サンセット大通り」と2枚一組になってたのでレンタルして見ました。こっちの方が、見てよかったです。