映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ミヒャエル・ハネケ監督「白いリボン」341本目

今より少し昔、ヨーロッパの小さな町で、一見素朴な人たちが一見平和そうに暮らしています。そこには冷酷な領主と何も言えない使用人たち、厳格すぎる親たちとはけ口をもたない子どもたちがいて、事件が1つ、また1つ、と起こっていきます。
誰かがつまずいてけがをする。誰かが足を踏み外して死んでしまう。誰かが畑を荒らす。誰かがムチで打たれる。誰の仕業かはわからないけど、誰かがうそをついてる。誰かが誰かをかばってる。
狭い狭い、舞台くらいの広さしかない町の中で、いろんなことが静かに隠されてる。そういう意味で、サスペンスいっぱいの映画です。ホラーでもミステリーでもない、サスペンス。(謎はあるけど)

この人の映画のなかの人たちは、感情を出さないですねー。語り口が公平の極みというか、どこにも偏らず冷静に落ち着いて、本当に自分が見たり聞いたりしたことだけを語るのが、すごい。ここまで普通にドラマを語れるのって。いままで舞台や映画で、大声をあげたりアクションしたりしてたのは、何だったんだろう?感動させるための演技なんて何もしないほうが伝わるって??

いやー、やっぱりすごい監督です。見てよかった。難解といえば難解で、誰も解き明かしてくれないままだけど、そんないろいろな感情を胸にためて複雑なまま暮らしていくのが人生ってもんなんだ、と思います。