映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

D・W・グリフィス監督「イントレランス」361本目

1916年製作のアメリカ映画。

どーしても見たくて500円DVDを買ったんだけど、フィルムの端っこが黒くて(多分ちゃんと全面に映像を映すことができなかったんだろう)真ん中が白くて(露光の調整も難しかったんだろう)見づらいです。特に、場面転換に入る「ゆりかごとリリアン・ギッシュ」の場面が白すぎる。

100年近く前の作品なので、もちろんサイレント映画。今のお金に換算すると数百億円をかけて作られた162分もの大作ですが、当時客が入らず大赤字になったらしいです。ストーリーが「難解」と書いている人もいるけど、難解というより、本来4つの「イントレランス=不寛容」、残虐な物語を無理矢理1つの映画としてまとめたために、ストーリーが追えなくなってしまったという、構成の失敗なのでした。4つの別々のストーリーとして見せればよかったのに、それぞれが数分ずつかわりばんこに出てくるから、ややこしい。今でもこういう映画ってけっこうあるけど(クラウドアトラスとか)、作ってるほうが期待するほど、見てる人はフォローできないので、成功するのは難しいと思う…。どんなに映画を見慣れた人でも、まったくの初見なわけだから…。

映像はすばらしいです。バビロンの神殿のストーリーは、私は「昔はエジプトの遺跡で映画を撮ってもよかったんだー」などと思って見てしまったのですが、全部セットなんですってね!どでかすぎる神殿のセット、アリンコみたいに大量のエキストラ。このボリュームの威力はものすごいです。正面から、横から、上から、斜めから、どういうアングルでも実物大セットなので迫力があります。

これ、映像編集ソフトで取り込んで、4つのストーリーをそれぞれ通しで見られるようにして見てみたいです。…と思ったら、日本ではそういう編集をしたおかげで、高い入場料にもかかわらず大ヒットしたんですって!(wikiによる)頭のいい人がいたもんだ。…ちょっとググったら、そのバージョンが国立近代美術館のフィルムセンターに残っていて、見た人もいるようです。もう少し調べてみよう。

「グッドモーニング バビロン」って映画は、この映画の舞台裏を描いたものらしいので、これも見てみよう。
うーむ、こうやってずぶずぶとはまっていく映画の世界って、深くてたまりません。