映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

レオス・カラックス監督「ポン・ヌフの恋人」362本目

新作「ホーリーモーターズ」をたまたま見て、旧作を見たくなったところに、DVDがツタヤに入ったというラッキー。

好き嫌いにかかわらず、なんとなくキレイで上品なイメージのパリの、裏通りにたむろしている浮浪者たち、というちょっとショッキングな存在が、刺激的で目が離せません。見ているうちに、存在しなかったはずの(自分のなかで)の彼らに夢中になっていきます。

いつも主役の、監督の化身ドニが、20年前なのにちっとも今と変わらない…と思って接写のときによーく見たら顔のシワが少なかった。…そうか、このときアレックス(=ドニ演じる)は足をケガしたから、ホーリーモーターズでもいつもちょっと足をひきずってたのか。

花火のシーン、ステキですね。空いっぱいに小さめの花火がドカドカ上がったり。「ナイアガラ」が川の両岸を埋め尽くす中を、ボートに引きずられて走る。比較的若い頃の作品を初めて見て初めて思う、この監督はパンクスなんだな。

ジュリエット・ビノシュ演じるミシェルは、謎を秘めたまま。こんなハッピーエンドを予感させる展開ではなかった気がするので、最後はちょっと意外、と同時に、心中にならなくてよかったという実感もあります。

とても魅力的な映画だったけど、「一枚上手をとられた感」はありません。そういう意味で「ホーリーモーターズ」は度肝を抜かれた分、高得点かな。