映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ウィリアム・フリードキン監督「フレンチ・コネクション」387本目

面白かった。むかしのスリリングな犯罪/刑事ものとして、楽しめました。
実話だから、単純な勧善懲悪で終わらず、ちょっと後味が悪い。(最後の音楽も)

主人公の「ポパイ刑事」ことドイル(ジーン・ハックマン)の暴虐っぷりが時代を感じさせます。
「4階に行くのに6階でエレベーターを降りるとは、敵もしたたかだ」とか言ってるくらいで、尾行テクニックも今と比べてたいしたことないし、カーチェイスの場面でも、クラクション慣らしっぱなしであっちこっちぶつかりながらただ飛ばすだけ、というシンプルさなんだけど、それだけリアルな感じがあります。

1971年のブルックリンはこんな町だったんだ。今はアートっぽいカフェがいっぱいある町だけど、40年前はかなり荒れてて、マジメな人はまず近寄らなかっただろうと思われます。
ちょうど旅行したばっかりなので、地下鉄が橋を渡って地上に出るあたりに見覚えがありました。
下から電車が透けて見える、スカスカな感じの高架線。タイル貼りのビルなんかは、昔も今も同じですね。

ヤクが積まれていると疑われる車をしぶとーく、しぶとーく分解するくだりのような地味なシーンを大切に作り込む感じが、昔の映画の良さですね。どうしても、もっとたくさん車を壊せとか、もっと拳銃を撃ちまくれとか、大げさな方向にエスカレートしてしまうので、逆にこういう「原点」的作品に魅力を感じました。