映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ヤン・ヨンヒ監督「かぞくのくに」433本目

わかりにくい映画ではないけど、なんとなく冗長なかんじ。沈黙の間が多く、長く感じる。
音声レベルが低すぎて、すごく聞き取りづらい(32型TVで見たけど)。試写って大画面のほかに、スマホとか、悪い環境でもやって試してほしいと思う。

この映画の卓越したところは、やっぱりテーマと、このリアルさ。フィクション映画にも、伝えないといけないことを伝えるミッションがあるものがある。

役者さんはみんないいけど、ヤン・イクチュンがやっぱりすごくいいです。「息もできない」で好きになりましたが、今回の脇役も、まじめに堅く、でも人間らしく、なんともいい感じ。滞在中のホテルでエロビデオを見てる彼、急に帰国を告げる電話をもらって動揺する彼。同僚の弱気な発言を恫喝しなければならない彼。…人間だなぁ。
あとお父さん。津嘉山正種。頑固で主義主張に生きるしかない切ない父。

この映画は、ラストの兄妹の別れと、妹が兄に買ったスーツケースを引いてどこかへ出かけるところにすべてが集約されてるんだな。それまではずるずるの退屈な日常の延長で、ここで初めて目が覚めて動き出す。そう考えれば、それまでのちょっとつまんない感じもそれでいいのかも、という気がしてきます。