映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

黒澤明監督「影武者」437本目

たまたま「デルス・ウザーラ」を見たばかりなので思うには、意外とこの2作品は似てる。
画面の暗さ、カラーのどぎつさや、カメラがすごく引いてるところ。デルス・ウザーラではそれがすごくロシアっぽく感じられたんだけど、同じ特徴がこの映画にあってびっくりしました。ロシアで影響受けてきた?

それにしても、仲代達矢の死体のようなメイクが、怖くて気色悪くて見てるのが本当に辛かった。2時間も見たのに、まだあと1時間もある。辛い。私は、名作と誰かが呼ぶ作品は、良さがわかるまで最低2回は見るようにしてるので、これがあと4時間続くわけです。カンヌってときどき謎だ。

(以下、2回目を見終わった感想)
これなんで三船敏郎じゃないの?これが三船だったら濃くて熱くて愛嬌のあるいい主役だっただろうな。当初主役とされた勝新太郎でも(想像しにくいけど)やっぱりもっと濃い主役になっただろうな。
冒頭、唐突に同一人物が3人いる感じ、こういう人を驚かせるかんじは、黒澤監督らしい。でも、長尺と引いたカメラ、登場人物の多さでヨーロッパの大作映画(「戦争と平和」とか「アンダーグラウンド」とか)のような印象が強い…主役以外の人たちも、過剰な演技をせず、現代のふつうの会社員のように淡々と侍の任務を行います。

ストーリーは実は面白いんだけど、面白く見せようとしていない感じ。大げさな演出をしようと思えばいくらでもできる監督なのに、あえてヨーロッパ風大河ドラマを作りたかったのかな。
長い小説を好んで読む人もいるし、長い映画が好きな人もいるのかな。でも、「きっと、うまくいく」の3時間と、「影武者」の3時間は、画面作りのサービス精神が全然違う。夢の場面が印象的で、老大監督の撮る心象世界の境地というかんじがします。このとき黒澤監督70歳なんだよね。

役者さんについて。
武田信廉山崎努なのか。平幹二朗だとばかり。(似てません?)
いいなーと印象に残るのは隆大介の信長くらいで(KREVAに似てる)、あとはとにかく引きすぎて個別に見えづらいです。(大滝秀治は別として) 萩原健一も探してしまったくらい。

「赤ひげ」までは私のイメージ通りの黒澤映画なので、それとこの映画の間に作られた「どですかでん」を見てみなければ。