映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ソフィア・コッポラ監督「ヴァージン・スーサイズ」481本目

タイトルやテロップに使われてる丸文字(というか、若い女の子が書く飾り文字)が強烈だわ。
「東京カワイイTV」だの、きゃりーぱみゅぱみゅだの、の世界。
そして、彼女たちがブロンドの清潔な美少女たちだということ、理想的な両親それも敬虔なクリスチャン、その娘たちが自殺する、という設定が、最初からなんか落ち着かない。

キルスティンダンストが、ほんとに素晴らしいですね。
彼女たちは一度も暗い顔を見せないけど、心の中に灰色のカタマリがたまっていく。これが4人いるから相乗効果で増強されてしまったのかしら。

音楽は“趣味がいい”んじゃなくて当時っぽい流行の、少女たちの憧れを思い出させるための象徴的な使い方です。10CCにしてもトッドラングレンにしても、そこをポイントにするなら「一番ヒットした曲」をわざわざ使ったりしないよ。逆にエンディングに流れるAIRの暗い曲はとてもいいです。ミュージックビデオも収録されていて、吐き出したガムが歌う変な映像だったことを思い出しました。ガムってポップでティーンズらしくて、吐き出されてどこかにくっついたガムの残骸は、輝く彼女たちと対極だなぁ。

お父さんを演じたジェームズ・ウッズは「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」のときの印象があって、清廉潔白なだけじゃなく強い主張や意思を感じさせます。

DVDに入ってるメイキングを見たら、原作者がどっぷり撮影現場にいたので驚いた。てか父親のフランシスコッポラも。たくさん配慮しながら、何もおろそかにしないで丁寧に作った映画なんだな。

タイトルでだいたいのストーリーまで想像してから見たんだけど、意外だった部
分は、娘たちが「自殺サークル」みたいに並んで揃って死んだんじゃなくて、先に死んだ子の姿を見ながら順番に自分の方法を選んでいったこと。

蜷川実花の作品と同じで、映画として誰が見ても良いと思うかどうかという観点で点を付けるとなんか違ってしまう、独特の美しさのある芸術作品、です。
私にも13歳の女の子だったとき、17歳の女の子だったとき、があって、全然華やかでも可愛くもなかったけど、気持ちはなんか完璧にわかる気がします。そういう作品でした。