映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ミヒャエル・ハネケ監督「隠された記憶」484本目

この監督の作品を見るのは「愛、アムール」「白いリボン」に続いて3本目。
「愛」が究極の愛、「白いリボン」は集団のなかに生まれる悪意と疑いの怖さをそれぞれ描いた作品という印象でした。そしてこの映画のテーマは、DVDに収録されている監督自身のインタビューによると「やましさ」らしい。

結局のところ誰がビデオや絵を送っていたのかが知りたくて、ネットを「隠された記憶 ネタバレ」で検索したら、ラストの“衝撃の場面”のことがわかったけど、その後もう一度見ながら、自分でも考えてみました。

この監督は映画で「神の視点」で人間の小ささを描く人だったはずだ。
ジョルジュが隠している記憶は、まだほかにあるんじゃないか?
マジッド自身も知らない、彼の両親が連れて行かれたときの事情かもしれない。ジョルジュは自分と違うものを恐れ、排除しようとする性格が子どもの頃からあったのかもしれない。それとは別のことかもしれないけど。
ラストシーンは、子どもたちの共謀をほのめかすだけじゃなくて、父たちの世代が恐れ合っていたのと対照的に、子どもたちには差別意識がないことを強く意図している気がします。

隠しカメラって多分そう安くないよね。いつもちょっと怪しい様子のピエロ君がなにか企んだのかも。謝らせてやろうと思ったのかもね。マジッドが、ジョルジュが出てるテレビを見て恐れていたから。

私も、誰かが自分に悪意をもって何か企んでるんじゃないかと、つまらない心配をすることがよくあります。
そういうことがまったくない人間になるのは、たぶん今生では無理だと思うけど、少しでも真人間になりたいものです…。