映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ルイス・ブニュエル監督「アンダルシアの犬」539本目

ダリが関わったこういう映画があるということは、大昔から知ってましたが、やっと見ました。
これはストーリー映画と同列に並べるより、草間弥生やフランシスベーコンの美術展で見た展示映像の仲間じゃないか?

1928年という、映画自体の黎明期といっていい時代に、ここまで思い切った芸術的作品がサイレントで作られてたってことにすごく驚いた…それは多分、ダリが長寿かつ現役であった時期がすごく長い作家だったので、せいぜい1950年代とかの現代に作られたものだと勝手に思ってたからでしょう。

私としては、ダリの絵画のイメージがどうやって生まれたか、どういう意味を持つのか、ということが、映像だとよく見える部分があって、非常に面白かったです。
手の中の蟻は、外から這ってくるというより手のひらから生まれてくるんだな。蟻が生まれてくるという状況や、動物の死体(絵画では食肉のようなかんじ)が載ったピアノは、男がよこしまな情欲を女性に対して抱いているときに現れる、心の中の悪意のようなものを表していたのだな、とか。

この作品をまさか淀川長治の解説で見ることができると思ってなかったので、レンタルDVDに感謝です。
これだから、ツタヤで古いDVDを掘るのは止められない…。