映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

河瀬直美監督「萌の朱雀」559本目

森の怖さと、田舎のやさしさという、山奥に行くと否応無しに感じさせられる二つのことを映画にしたかんじ。
冒頭のうごめく森がいきなり怖いです。美しいけど。
生活感と相反するような、切り立った山の険しさ。ブータンかよ!?と思ったけど日本ですね。
行きている森の中で暮らす人間たちが、彼らの手のひらの中で転がされてるようです。
トトロの森とか、遠野物語とかに通じてる世界だけど、ここまで山のほうが印象が強くて人間のほうが弱い映画は、意外と少なかったんじゃないかと思います。
河瀬監督って、本当は天狗の子か何かじゃないだろうか。

ものすごく台詞が聞き取りにくいけど、ストーリーなんて、どうでもいいような気もする。家族がいて、悪いことがあったり、つまらないことがあったり、悲しいことがあったり。

うーん。たいへん個性的ですごく面白いところが多いと思うけど、「ミツバチのささやき」のような人間のかなしさは感じないし、圧倒的な自然を描ききった感じでもなかった。なんか、これから大化けしてすっごいものを撮りそうだけど、「殯の森」はまだその“すっごいもの”ではない、と思います。あともう一作、なんか徹底的に天狗の子っぽいすごいものがくるのを待ちます。