映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

市川崑監督「細雪」(1983年)581本目

岸恵子佐久間良子吉永小百合古手川祐子。もーこの女優さんたちの美しいことといったら。
岸恵子このとき51歳。佐久間良子44歳。吉永小百合は43歳だけどせいぜいアラサーという役で、43歳の“初老の男”とお見合いして断ったりしてます。本当に若いのは古手川祐子24歳だけなのに、この華やかさは何でしょう。二人目のお見合い相手、細川俊之は当時48歳の役だけど、実年齢は吉永小百合と同い年。
女優ってスーパーマジック!

そして、どれだけタイミングを狙い澄ましたんだ、と驚きを抑えられない、満開の桜と完璧な紅葉。
まるで深海で巨大イカを撮影するみたいに、ロケ隊はあちこち何日もかけてベストスポットを探しまわったのに違いない。

それにしても、吉永小百合がものすごくおとなしい、地味な役で、出番も佐久間良子古手川祐子に比べてだいぶ少ないです。おとなしくてほとんど物を言わないのに、口を開くとちょっと皮肉に「お家柄がいいから」なんてことを言ったりします。マネージャー、こんな役受けてよかったんですか?この人が…まさかの助演?その辺は映画会社間の力関係なんでしょうか〜 なんてうがった見方をしてみたりして!

ラストの、桜の舞い散るなかを美しい姉妹が笑いさざめくスローモーション。これを回想して、娘のひとりの婿が泣く、という。
ヴァージン・スーサイズ!みんな人妻だけど、誰も死なないけど。

美しい女たちの、桜の盛りのような一瞬の輝きを思って男が泣く。という映画だったのだ、とこのときに気づく、という仕組みです。小津安二郎的。

盛り上がりのない映画だけど、終わりよければすべて良し。でした。