映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

市川崑 監督「東京オリンピック」623本目

強烈な1本。
1964年当時は、テレビですごいドキュメンタリーをやるという感じじゃなかったのかな。大変力の入った作品だけど、こういう映画が作られることはもうないと思う。

ベルリンオリンピックの「民族の祭典」っ映画が、この前にあったんですよね。
冒頭に、古いビルを鉄球を打ち付けてどかんどかん壊す映像が使われていて、音楽は当時の「イカす」映画みたいにとんがっていて、なんかびっくりです。
ギリシャから世界各国を経て、原爆ドームの横を通って、東京までたどり着いた聖火。
戦渦を乗り越えて、私たちの国はここまで復興したんだ、という思いと、そんな日本を応援する思いでオリンピック開催地が選択されたのかという思いと、これによって「国威発揚」という、一番向いたくない方向へ向う一般大衆の気持ちを思って、複雑です。

ネガティブな何かのドキュメンタリー番組のように、選手の不安な表情に、ウルトラマンが出てきそうな音響効果が重なります。当時一番クールだった映画監督と、グラフィックデザイナーの起用。次に日本でやるオリンピックに、ふさわしい人がいるのかな?